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2015年6月12日(金)

KS405−134
6月の社長メッセージ 
   電力ケーブルの信頼性向上に有効な高調波設備診断技術
        〜特別高圧ケーブルの未橋絡水トリーを検出しケーブル事故を防ごう!〜

 電力輸送に用いられているケーブルの絶縁破壊等の事故により停電が引き起こされますと、社会的影響は大きく、損失金額も甚大なものとなります。高度成長期に設置された架橋ポリエチレン絶縁ケーブル(CVケーブル)は、設計寿命の30年(平均寿命28年)を経過して更新期を迎えていますが、点検や診断を計画的に実施し、大きなトラブルを防ぎつつ寿命限界まで使用したいという要望があります。
 電力ケーブルには、3.3KV及び6.6KVの高圧ケーブルと、11KV以上の特別高圧ケーブルがありますが、それらの劣化様相は大きく異なっているのです。CVケーブルの故障要因の多くは水トリー劣化で占められています。水トリー劣化とは、水の存在下において、異物や突起等の電界集中部に発生する現象であり、水が入った微小ボイド(空洞)及びそれらをつなぐ樹枝状の微細な通路の集合体として観察されます。水トリーが成長を続けますと、最終的には絶縁体を橋絡した(水トリーがケーブルの内部半導電層と外部半導電層の間をつなげてしまった)状態となりますが、水トリー橋絡直後の絶縁破壊電圧は1020KV程度と推定されています。そこで、11KV級未満の高圧ケーブルにおいては、運転電圧で直ちに絶縁破壊が生じることはありませんが、特別高圧ケーブルにおいては、運転電圧と橋絡水トリーによる破壊電圧に差があることから、22KV33KV)級では橋絡水トリー発生前後で、66KV77KV)級では未橋絡状態で絶縁破壊が生じることになります。従って、ケーブルの健全性を確認する劣化診断技術としては、高圧ケーブルでは橋絡水トリーを検出する技術、特別高圧ケーブルでは未橋絡水トリーを検出する技術が要求されています。
 高圧ケーブルの事故原因のうち水トリー劣化によるものが、事故総数の約35%を占めていますが、その劣化診断技術は、直流漏れ電流法や部分放電法など古くから適用されており、信頼性も高く実績は豊富です。しかし、特別高圧ケーブルについては、未橋絡水トリーの検出が不可欠であり、新手法の残留電荷法や交流損失電流法などがあるものの、それらの有効性については懐疑的な見方が多いのです。また、22KV級ケーブルの故障は運転開始10年以上のものに多い劣化形であるのに対し、66KV級ケーブルでは現地での施工ミスなどに起因する初期故障的な破壊が多くなっています。この原因として、各々のケーブル及び接続部の構造の違いが考えられます。事故の起きた22KV級ケーブルのほとんどは湿式架橋により製造されたテープ外導を有するケーブルであり、施工不良による侵水があった場合、水トリー劣化が生じやすいのです。一方、66KV級ケーブルは押し出しによる内外導を有しており、水トリーは発生しにくい反面、運転電圧(ストレス)が高いために施工時の外傷、組立ミスが事故につながりやすいと考えられます。

 ところで、22KV級と66KV級の絶縁破壊発生状況の内訳〔電気学会:「電気設備の診断技術」、P.2542003)〕を見ますと、22KV級ケーブルでは、本体部(絶縁体、銅テープ、シース)が69%で、接続部(ケーブルヘッド、ジョイント)は31%であり、66KV級では本体部が34%、接続部は66%となっており、劣化形態が異なるのが窺い知れます。
 高調波設備診断技術は、誘導電動機に対する有効な診断手法として確立 されていますので、その電気的等価回路がケーブルと類似していることか ら開発されたケーブル劣化診断技術と言えます。現在、22KV級、66KV 級、154KV級の特別高圧ケーブルの診断評価がなされており、魅力ある 〔今月の花 ピラカンサの花言葉のような〕電力ケーブル診断技術として 確立される日も近いと思われます。



ピラカンサ (トキワサンザシ)
   花言葉「魅力・快活」

 
                                                  2015年6月12日
来月のメッセージも是非ご覧下さい 
                             エイテック株式会社


2015年5月8日(金)

KS405−133
5月の社長メッセージ 
   工場設備の安全性向上に必要な高調波設備診断技術
        〜最近の化学プラントの事故から安全管理の基本を学ぼう!〜

 最近、化学プラントの大きな事故が、東ソー梶A三井化学梶A鞄本触媒と続いています。いずれも日本の化学産業を代表するトップメーカで、日頃から安全管理をしっかりと行ってきた会社です。それでも事故が起きてしまったことに、その背景要因が何であるかを検討し、それを各社に水平展開して、事故を防止していく必要があります。これらの事故に共通している事項が三つあります。一つ目は、事故が緊急時や非定常運転時に起きていること。二つ目は、運転員が緊急時にプラントを適正に運転できなかったこと。三つ目は、事故が起きる直前まで異常事態が生じていることに気付かなかったことです。
 事故原因として直接問われたことは、緊急停止や負荷の大幅変動のような非定常時に、現場の運転員が適切に対処できなかったことです。しかし根本原因を考えれば、事故に繋がった事態に現場サイドで対応していくには限界があり、設備システムの安全管理手法を見直す必要があります。最近の三つの事故から学ぶ課題を集約すると、次のような3点になるかと思います。
 
@一人ひとりの「リスク感性」の涵養です。いずれの事故においても当事者は事故直前まで「危ない」とは思っていません。最近は事故発生率が低下し、事業場規模によっては長年事故がない状態が続いています。これは安全活動の成果ですが、一人ひとりの「リスク感性」を鈍らせることになります。「リスク感性」は痛い目に遭うという経験の積み重ねによって身につくものですが、最近の現場は自動化が進み、コンピュータで制御されているために、従来と比較して危ないことを経験する機会が格段に少なくなっています。「今までの安全は明日の安全を保証するものではない」を念頭に、「人は過ちを犯す。機械は壊れる」という事態を想定して、リスクアセスメントと危険予知とを継続していくことが大切です。
 A現場の対応能力低下を補う設備診断技術の導入です。現場の対応能力低下は、熟練技能者がいなくなった問題とされますが、根本的な問題は、現場の安全を人に依存することで確保することの限界が見えてきたことです。安全は「人的条件」と「物的条件」の積で表わされます。「人的条件」の低下には、「物的条件」を充実して対応する必要があります。そのためには、稼動中の設備の状態監視を的確に行うことができる高調波設備診断技術のような、新技術の導入が不可欠なのです。

 B人事交流を含むコミュニケーションの充実が必要です。化学プラントのような現場には、高度な専門教育を受けた技術者の配置が望まれますが、そうした人たちは研究職に就きたがる一方、製造現場での仕事を「3K(きつい・汚い・危険)」などと敬遠しがちです。会社側もそのほとんどを研究所に配置しており、多くは研究所と製造現場の間ではあまり人事交流がありません。そのため、研究所で当たり前のように認識されている危険性が、製造現場では共有されていないなどという断絶が生じるのです。一方で、現場管理者は膨れ上がる日々の業務に忙殺され、ライン長として職場の安全に取り組むゆとりをなくしています。管理者が運転者と交わす種々のコミットメントが安全確保の要になるのです。また、プラントが抱えているリスクを理解しているはずの現場技術スタッフの力量不足も浮かび上がってきます。技術部門がもっと積極的に現場に関与する必要があるのです。
 
そこで、経営トップに求められることは、現在の企業を支えているのは 生産現場の「ものづくり」であることを再認識し、トップ主導の安全管理 体制を構築することです。特に、純粋に〔今月の花 モッコウバラの花言葉 のように〕取り組む管理者・技術スタッフの行動を強力に支援することが 最も大切と言えます。



   モッコウバラ (木香花)
   花言葉「純粋・純潔」

 
                                                  2015年5月8日
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                             エイテック株式会社


2015年4月6日(月)

KS405−132
4月の社長メッセージ 
   風力発電の信頼性向上を目指す高調波設備診断技術
        〜風力発電設備の多発する故障・事故を無くし信頼性を高めよう!〜

 風力発電は世界各国で活用されており、2020年には世界の電力需要量の約1割に達すると言われています。風力発電は従来の集中型電源と様々な点で異なる特性を持つもので、長所としては、主に環境負荷の小ささ、化石燃料の使用量削減、エネルギー安全保障、産業振興・雇用創出などが挙げられます。一方で短所としては、出力電力の不安定・不確実性と、周辺の環境への悪影響の問題があり、特に設置場所の選定が重要となります。
 日本での風力発電は、欧米諸国に比して普及が進んでいません。その理由として、台風に耐えうる風車を施設すると欧米と比較してコストが上がることや、大量の風車を設置できるだけの平地の確保が困難なこと、もともと日本ではクリーンエネルギーとして太陽光発電を重視してきた歴史があることなどが挙げられます。また、アメリカやドイツは原子力発電所の新設を政策的に停止しているため、風力発電への依存度を増しています。
 風力発電の信頼性向上を目指すに当たり、日本における故障・事故について、「新エネルギー・産業技術総合開発機構(2012)」の報告書によりますと、故障・事故発生要因の内訳として、@自然現象(落雷、暴風など)が30.4%、A風車内故障(設計不良、製造不良、施工不良)は19.0%、B人的要因(メンテナンス不備)4.5%、C系統故障0.6%、D原因不明(調査中、特定出来ず、その他)が45.5%、となっています。ここで分かることは、日本では「原因不明」の故障を除くと、「自然現象」によっておこる故障・事故の割合が全体の30.4%(落雷22.2%、暴風など8.2%)を占めています。「原因不明」の「その他」は10.7%あり、これは経年劣化や磨耗によるもので、大半が運転開始後5年以上を経過した風車で起こっています。
 一方諸外国との比較については、ドイツのFraunhofer研究所が公開するドイツにおける風車の故障・事故の報告書「Fraunhofer IWES,2013」によりますと、@自然現象が12.04%(暴風・乱流:5.16%、落雷:3.66%、凍結:3.22%)、A風車内故障・人的要因は62.85%(部品不良:36.68%、施工不良:3.38%、制御:22.79%)、B系統故障6.54%、C原因不明7.55%、Dその他(経年劣化や磨耗)が11.02%、となっています。

 ドイツでの故障は、自然現象が全体の12%であるのに対して、風車自体の部品や施工の不良によるものが40%、また制御による問題が23%近くで、圧倒的に風車自体や人的な要因によるものが多いのです。特に落雷による故障の比較は、日本と比べてかなり低く、逆に風車内故障は高くなっています。  自然現象による故障が多く起こっている部位は、前述の総合開発機構報告書2012年度版によりますと、ブレード、制御装置、電気装置、系統接続装置、風向風速計、ピッチ制御装置、といった順位です。この自然要因による事故や故障は、技術の進化によって回避、減少させていくことができるものであり、日本における風力の可能性を減少させる根本原因にはなりません。
 一方、風車内故障については、発電機部を構成している発電機、回転軸、制御機器、増速機(遊星歯車など)、などで構成されるナセルと呼ばれる筐体に収納されている機器の異常を、高調波設備診断技術(HDT)の活用により的確に捉える ことが可能です。また、風の運動エネルギーを低速の回転エネルギーに 変換するローター部(ブレード、ローター軸、ハブなどで構成)の異常も 検出できますので、HDTは風力発電設備の故障・事故を未然に防ぎ信頼 性向上を図るための歓迎すべき〔今月の花 コブシの花言葉のような〕新 技術と言えましょう。
 



   コブシ (別名:田打ち桜)
   花言葉「歓迎・信頼」

 
                                                  2015年4月6日
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                             エイテック株式会社


2015年3月10日(火)

KS405−131
3月の社長メッセージ 
   故障物理に基づく設備管理に有効な高調波設備診断技術
        〜確率論と決定論の融合による寿命予測で事故ゼロ社会を実現しよう!〜

 最近、保全費の最適化ということに大変関心が向けられています。これは一つには競争が非常に厳しい状況下で、出来るだけ要らない無駄な保全費は省きたいということに理由があります。一般に適正な保全費は、設備の評価額の34%であるという話を良く耳にします。しかし、保全費の最適額が幾らであるかということは、現実には具体的に良く解っていません。古い考え方としては、保全費を減らせば故障が起こり損失が増え、保全費を増やせば故障は減るけれども経費が増えるので、保全費の出費と故障による損失との和を考えて、その和が一番小さい条件として最適な保全費が決まるという議論があります。これは、経営工学的な方法論に基づいた考え方ですが、最近は事故を絶対起こしてはいけないという社会からの厳しい要求があります。極端な例として、10年に一度ぐらい事故が起きても、小さな事故であればその方が安いといった議論は通用しない環境にあります。いわゆるコストとの妥協による最適化という考え方が基本的に受けいれられないとすると、マネジメントすなわち設備管理の場面で、新たな方法論によって事故ゼロという課題に取り組むことが要求されていることになります。
 最適な保全費を論ずる際に、LCCLife Cycle Cost)という概念で考えるべきであると言われています。それは、初期投資額が安くても、使用中の運転費や保全費が高ければ、全体すなわち設備の建設から廃棄までのライフサイクルを通して考えると有利ではなくなるので、投資戦略はトータルで最もコストが安いものを選ぶべきであるという考え方です。確かに分かり易いのですが、LCCが普及しない最大の理由は、ライフサイクルが分からないことにあります。従って、これからの設備管理技術では、余寿命をいかに予測するかが最も重要なポイントになると言うことが出来ます。
 これまでは、余寿命を確率で表現するのが一般的でした。起こり得る原因が多数あり、どの原因で故障するか分からないので、今迄の経験から、平均して推定することになります。こういう過去の経験値を統計的に分析することにより、使用年数に依存して現象を故障率すなわち故障する確率で表現することが出来ます。しかし、それには幾つかの問題点があります。例えば、過去のメンテナンスが不適当であれば、その時の故障率は大きく、その後メンテナンス方式を変更したとすれば、もう過去のデータは使えません。

 あるいは、設備が老朽化してくると現在の故障率は過去より大きくなることも考えられます。そういう意味では、全体をひっくるめた平均値的な寿命というものでは予測の精度は十分ではありません。従って、対象とする設備の過去における故障実績の平均値に基づいて故障の可能性を評価する方法ではなく、対象設備固有の条件から寿命を個別に予測する方法が必要になります。それは、一般に故障物理と呼ばれている故障のメカニズムに基づいて発生の可能性を評価する考え方です。以前から、この両者の考え方の得失について、すなわち確率論か決定論かという議論が繰り返されています。決定論は故障物理の解析を必要としますが、それには個別の現象毎に数学モデルが異なるため、専門的知識と膨大な計算が実用化を阻んできました。
 高調波設備診断技術は、確率論で用いられる数学的統計処理による
データ解析を、物理的な因果関係を示す決定論の領域に応用したもの で、故障物理に基づいた寿命予測の新しい方法論を提示したものと言 えます。正に、熱意と情熱〔今月の花(実)レモンの花言葉〕が生み 出した技術なのです。
 



   レモン (檸檬)
   花言葉「熱意・情熱」

 
                                                  2015年3月10日
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                             エイテック株式会社


2015年2月4日(水)

KS405−130
2月の社長メッセージ 
   自動車の安全性向上に効果的な高調波設備診断技術
        〜自動車用機能安全規格ISO26262の適用を標準化しよう!〜

 自動車用機能安全規格ISO26262201111月に制定され、これを受けて、自動車業界ではこの規格の適用を標準化する動きがあります。自動車の長い歴史の中で、多くの機能が主に機械的に実現されていましたが、近年、電子制御される部分が急速に大きくなってきています。急速な複雑化の為に故障部位はますます増加し、更に高性能化の為に誤動作の際の被害は一層無視し得なくなりつつあります。その一方で、より高性能で、より安価な製品を、いち早く得たいという社会のニーズは、しばしば安全性と対立します。安全性の確保も同様に重要な社会のニーズである為、社会が許容する安全性とのバランスを確保する為に、ISO26262は、2000年に制定された電子機器全般の機能安全規格IEC61508を土台に、自動車向けに詳細な要件を追加した規格なのです。
「機能安全」とは、安全機能や安全対策によって、許容できないリスクから免れるための技術の総称です。機能安全(functional safety)の「機能」とは、制御対象やコントローラを監視する安全装置の役割のことを指します。通常、安全装置にはコンピュータが使われ、コントローラに故障などが発生した場合は、このコンピュータが制御対象を停止したり、ユーザに警告を出したりします。
 自動車に特化した機能安全規格が登場した背景に、自動車の電子化の進展があります。メカ的な動きでほとんどの機能を提供していたかつての自動車と違い、現在の自動車の機能は電子制御で実現するものが中心を占めるようになっています。安全性を高めるABS(アンチロック・ブレーキ・システム)やESC(横滑り防止装置)、燃費向上をもたらす燃料噴射制御システムなどの機能は、電子制御なしには実現し得ません。その結果、1台の自動車が搭載するECU(電子制御装置)の数は数十個にのぼり、今後もハイブリッド車や電気自動車に見られるモータ制御やバッテリ制御に加え、ITS(高度道路交通システム)や自動走行機能などの登場で、更に電子制御の存在感が高まることが予想されます。
 電子制御は、自動車に新たな機能を次々ともたらす半面、安全性確保のうえで新たな課題を浮かび上がらせています。障害発生時に原因究明が難しくなっている点がそれです。障害発生の原因がECUだった場合、対処がとたんに困難になってしまいます。ECUの中のデバイスやソフトウエアの中身がブラックボックスに近い存在だからなのです。しかし「機能安全」は、これまで日本のメーカの多くが進めてきた安全性追求のアプローチとは、違った観点での取り組みが求められます。

 障害による危険性を左右するのは、その危険が起きる「頻度」と、危険がもたらす被害の「程度」です。それぞれを低減すれば危険は許容できるレベルに抑えられます。日本のメーカが追求してきた安全は「頻度」を低減する手法で、部品の品質改善で危険頻度を下げて、危険そのものが起こらないようにしようという「本質安全」が中心でした。勿論その手法でも極めれば危険は回避できるものの、いくら品質を高めても故障をゼロにすることは、技術的にもコスト的にも難しいと言わざるを得ません。これに対し「機能安全」は、「程度」の面から安全性を確保しようという考え方です。危険時の被害レベルを引き下げることで、危険が起きてもその実害が人間に及ばないようにしようとするものです。つまり事故(システム故障)をゼロにすることに他なりません。
 
品質改善による「本質安全」への取り組みも怠るわけにはいきませんが、「機能安全」を組み合わせれば、より効果的に安全性を高める ことができます。「機能安全」は、エネルギーバランスが評価できる 高調波設備診断技術の活用により、安全性追求の投資対効果を引き 上げる一つの手法として思い出〔今月の花(実)キンカンの花言葉〕 に残ると言えましょう。
 



   キンカン (金柑)
   花言葉「思い出・感謝」

 
                                                  2015年2月4日
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                             エイテック株式会社


2015年1月8日(木)

KS405−129
1月の社長メッセージ 年頭の挨拶
2015年度 エイテック標語3Z〔Zero-recall(リコールゼロ)・Zero-fault(故障ゼロ)・Zero-accident(事故ゼロ)〕
        〜高調波設備診断技術の活用でリコールをなくし、故障や事故と決別しよう!〜

新年、明けましておめでとうございます。 
 昨年、自動車産業界で大規模なリコール問題が発生したのは記憶に新しいところです。それは、自動車部品メーカのタカタが、
2001年から02年ごろにかけて製造した助手席用エアバッグに不具合があるとして、世界で892万台(トヨタ:431万台、ホンダ:317万台、日産:124万台、マツダ:20万台)のリコールを発表したことです。その内容は、エアバッグを膨らませるガス発生剤の製造工程に問題があり、エアバッグが作動した際にガス発生剤の金属容器が壊れ、最悪の場合、破片がエアバッグの外に飛び出したり出火したりする恐れがあるというものです。すでに、破片が体に当たるなどして米国で死亡事故が発生しています。
 ところでリコール(
recall)とは、製品に欠陥があるとき、生産者が公表して製品を回収・修理することで、自動車では、生産者が国土交通省に届け出て消費者に製品の回収を伝え、無償修理しなければなりません。たった一つの部品に故障が生じて人身事故まで発生する場合、人間尊重の今日では、企業の存続に係わる重大問題に発展します。顧客はその企業の製品を安心し、信用して購入し、使ってくれるわけですから、顧客の信用を失うようなリコールはあってはならないし、故障や事故は絶対に起こしてはならないのです。15年度エイテックの標語3Zの徹底追求を願う次第です。そこで、リコール問題を解決する方法は何かを考えてみます。
 
設備や装置には寿命があります。人間は頭が痛い、熱がある、だるいなどいろいろな症状に気がついて、病院に駆け込んで注射を打ったり、薬局から薬を買い、飲んだりします。一年に12回は、人間ドックに入り精密検査して大病になる前に手当てして健康を維持します。設備や装置も全く同様で、このやり方を生産現場では予防保全活動といっています。現在は、設備依存型もの作り時代、折角多額の投資をした設備が故障多発で稼動率が落ちるのでは経営が破綻しますから、全社的な生産方式として全員参加生産保全活動(TPMTotal Productive Maintenance)が行われています。故障ゼロ、事故ゼロを達成するためには避けて通れない活動であり、四つのステップに分けて計画的に進めることが肝要です。

[ステップ1]強制劣化(ストレス劣化)を排除し、自然劣化の状態を維持できるようにしなければなりません。そのためには、ストレスの兆候を捉えるセンシング技術と診断機器の活用が望まれます。高調波設備診断技術(HDT)はその目的に適うものと言えましょう。
[ステップ2]設計上の弱点改善による寿命延長を図ることです。使用部品や構造上の問題、負荷状態をチェックし、設備の弱点を改善していく
MPMaintenance Prevention:保全予防)設計を意識して進めることが必要です。ここでもHDTが有効なツールとなります。
[ステップ3]定期保全による傾向管理の完全実施により、設備の構成部品の寿命の見直しと取替基準を設けることができ、保全の質を高められます。HDTは傾向管理には最適なのです。
[ステップ4]予知保全への移行です。予知保全とは「設備の状態を基準にして保全の時期を決める方法」であり、これにより、設備状態 の定量的把握、異常や故障原因の追究、将来への影響の予測、必要な 対策の提示が可能となります。まさにHDTは予知保全のための賑や かな〔今月の花(木)ベニカナメモチの花言葉のような〕技術と思えてなりません。
 











   ベニカナメモチ (紅要黐)
   花言葉「賑やかな」

 
                                                  2015年1月8日
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                             エイテック株式会社


2014年12月4日(木)

KS405−128
12月の社長メッセージ
   設備の早期異常診断を可能にする高調波設備診断技術
          〜設備の安全性と信頼性を確保し高い稼働率を上げよう!〜

 昨今は様々なところで不十分な設備保全による重大な事故が頻発しています。高速鉄道や化学プラントの事故、トンネルの天井板崩落事故など、どこでいつ事故に遭うか分からない不安な状況が生まれています。また、メディアでも「21世紀はメンテナンスの時代である」と報じられており、顧客も高性能で安価なものを求める時代から、安全・安心を求める時代に変わってきました。「壊れない機械や設備はない」ので、それを「いかに安全・効率的に使うか」が主流になるのは必然です。
 設備の安全性と信頼性を確保し、高い稼動率状態を維持するためには、@設備の状態を監視、A早期に異常を検出、B適切な対策を取る、ことが肝要です。通常、対象となる設備では、適切な部位にセンサを設置し、圧力・流量・温度・振動といった物理量を測定し、経験的に定められた“しきい値”を超えた場合にアラームを発するという“しきい値監視”が行われています。しかし、このような素朴な監視方法では、誤検出を防ぐために通常時の値のバラつきから明確に区別できるだけの大きな値にしきい値を設定する必要があるため、結果として異常の検出が遅れる傾向にあります。また、取得している物理量が多くなれば、各物理量に適切なしきい値を設定することには大きな労力と費用を伴います。
 こういった欠点を補う手法として、「物理量間の関係性」に着目した監視手法があります。その一つに、設備の複数個所の測定データの関連性に着目し、単点のしきい値監視では検出困難な異常を、多点測定によって早期に検出する解析技術「SBMSimilarity Based Modeling):類似性に基づくモデリング」があります。SBMはある時刻の複数の物理量を一つのベクトルとし、正常時に得られたベクトルとの類似性を評価することで状態を評価する手法です。SBMのような「物理量間の関係性」に着目した手法は、単点ごとのしきい値監視と比較してしきい値の設定に関する労力が少なくてすみ、さらに、運用を続ける過程において発生した異常事象と、その時に得られたベクトルとをデータベース(DB)として蓄積することで、測定ベクトルと異常DB内のベクトルとの類似性の評価により、異常原因の特定までを含めた診断が可能になります。

 このようにSBMは原理的には多点一元測定手法のため、多くの利点を有しており、米国を中心に航空機、化学プラント、発電プラントなどの大規模設備へ適用され、既に多くの実績を残しています。一方、日本においてはSBMをはじめとする「物理量間の関係性」に着目した手法の実システムへの適用は一般的ではありません。その理由は、実システムに適用するには対象設備に応じてカスタマイズが必要不可欠なためで、新規手法の採用には消極的なのです。しかし、これらの手法を導入することで状態監視精度を向上させ、設備の安全性と信頼性、さらに稼動率を向上させる余地を大きく残しています。
 他方、高調波設備診断技術(
HDT)は、一個所の測定で複数個の次数高調波データを取得する、いわゆる一点多元測定手法と呼べるもので、SBMの原理と表裏の関係とも言え妙なるものがあります。HDTで用いる高調波の次数は、設備のモータ部と負荷部、そしてインバータ部を合わせ第40次までの高調波で、センサは電源ケーブルや配電盤の端子など一個所にあてがって電流高調波磁束をキャッチします。それを基に、各部位の異常の有無や程度を瞬時に分析・評価します。さらに当社のIT技術を駆使したKS-NETの活用により、設備の劣化度に加えて劣化速度を加味した傾向管理が行えるので、寿命予測型保全システムの特徴をもち、消されない記憶(今月の花 タラヨウの花言葉)に残る保全技術であると言えましょう。




    タラヨウ (葉書の木)
   花言葉「消されない記憶」

 
                                                  2014年12月4日
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                             エイテック株式会社


2014年11月4日(火)

KS405−127
11月の社長メッセージ
   高調波設備診断によるインバータ装置の保全手法の改革
          〜鉄道車両用インバータ装置の更なる信頼性向上を目指して!〜

 インバータ装置は、省エネルギー化や、生産性の向上、操作性の向上など多くの特長があり、産業用はもとより民生用、家庭用にいたるまで広く普及し、各種産業機械のハイテク化に大きく貢献しています。産業用分野においては、1980年代よりインバータ装置がモータの制御装置として採用され始め、鉄道車両にも多用されるようになってきました。
 鉄道車両のインバータ装置は、もともと性能と信頼性の向上及び保守の省力化を目指した電子機器でしたが、最近では車両故障の中でインバータ装置の故障が目立つようになっています。鉄道車両は長きにわたり同じシステムを使用していましたので、その間に発生した不具合を、設計や保守作業にフィードバックすることで、車両に不具合が発生することを防止していたのです。しかしインバータ装置は、これまでの経験だけでは保守できないことに加えて、ブラックボックス化されているため、最適な保全手法の確立が課題となっています。
 鉄道車両のインバータ装置に関しては、鉄道総合技術研究所が、1995年度〜2008年度の14年間で約22,000両のデータを用いて実施した「車両用電子機器の故障防止に関する調査研究(20113月)」で、経過年数と故障率、及び故障の個所と内容についての報告がなされています。その報告によりますと、最も故障が多く発生しているのは、新製から8年目の経年故障で、約2.3%の故障率となっています。次に新製から1年未満の初期故障が多く、故障率は約2.1%と高く、初期故障がストレス劣化であることを暗示させています。また、インバータ装置の故障個所は、制御部(コントロール基板)が50%と最も高く、次に主回路半導体部(ドライブ基板と電力素子)で32%、その他の回路構成部(平滑コンデンサ)は11%、その他が7%となっています。最も多い制御部について、原因が判明した故障の内容を見ますと、ゲート論理ユニットの不具合は47%、制御電源の不具合が30%を占めています。特に制御基板上の部品は、IC55%であり、また基板部品の故障モードの約3割がはんだ不良となっています。このはんだ不良の原因としては、基板材料・部品リード部・はんだの熱膨張係数の違いから、温度変化による繰り返し応力が発生したため、部品リード部にクラックが発生したためと考えられています。また主回路半導体部では、ドライブ基板及び電力素子の不具合は、それぞれ54%及び46%と、ほぼ同数になっています。

 車両走行用インバータ装置は、使用環境条件が厳しいために、新製から1年未満の初期故障が、また新製から8年で経年故障が多発しています。電子機器は故障の予兆がない場合が多いことから、信頼性向上のためには、目視点検もさることながら、いかに故障の予兆を捉えて対策するかが最重要となります。この課題を解決する秘密兵器が〔今月の花 アカシアの花言葉〕、高調波設備診断法なのです。
 当社の高調波設備診断システム「KSシリーズ」は、インバータ装置で駆動するモータや負荷(車軸や歯車など)と共に、インバータ装置各部(平滑コンデンサ、コントロール基板、電力素子、ドライブ基板)の異常・劣化を診断・分析し対策を含めた保全法を自動的に知らせます。その結果を基に、モータや負荷の不具合個所を整備・更新することにより、インバータ装置へのストレスを抑えることができ、装置の延命化、ひいては信頼性向上に寄与するのです。












     アカシア(中国:広州にて)
   花言葉「秘密・優美」

 
                                                  2014年11月4日
来月のメッセージも是非ご覧下さい 
                             エイテック株式会社


2014年10月3日(金)

KS405−126
10月の社長メッセージ
   高調波設備診断技術は電気設備機器のヘルスモニタリング
          〜電力インフラの配電系統における地中線路の劣化診断手法を確立しよう!〜

 最近論じられている「構造ヘルスモニタリング」(SHMStructural Health Monitoring)という技術は、土木、建築、航空、船舶、機械、自動車、原子力、鉄道、電気、電子、計測などのいろいろな分野が集まり、この10年で大きく成長してきています。元々このSHMは、構造物にセンサを設置して、振動等の物理量を観測(センシング)し、さまざまな信号処理手法を駆使して、損傷や劣化の発生箇所及び度合いについて動的に診断し、今後の進展状況について予測(診断・予測)する技術です。具体的には、新築・既存の構造物に、センサを設置し、応答波形から構造性能を診断します。小さな地震や常時微動による応答を活用した性能診断や、大地震や台風など損傷の発生する可能性のある場合に、損傷程度の推定を自動的に行うことなどが代表的な仕組みです。長い期間データを蓄積することによって、経年劣化の把握にも用いることができる技術であるため、SHMは「状態監視」という意味をも含んでいると理解できます。従って、高調波設備診断技術もSHM技術の分野にあると言えましょう。
 一方、安全安心に対する社会からの関心の高まり、高齢化していく人口動態、環境資源への配慮等から考えれば、既存の膨大な鉄道や電力などのインフラを、いかに長く使いこなすかということを当然考えていかなければなりません。そのような中で、更新を極力少なくし、事故災害を減らすことが大きな課題となりますが、そのためには、インフラの状態を定量的かつ効率よくモニタリングすることがかかせません。それにはセンサと、センサからのデータ伝送、データの処理と貯蔵などの技術が必要になります。
 グローバル時代の中で、社会がネットワーク化されてきていることは感じるところです。地震や事故で地方の工場の操業が止まると、部品が調達できなくなり、全く別の場所にある工場が停止に追い込まれることが往々にして起きています。人やものの移動がよりスムースに、そして迅速に行われることが前提の社会になりつつある中で、鉄道や電力インフラが災害時にさえ、止まることは社会に多大の不都合をもたらします。インフラ異常の早期発見や、より少ない時間で復旧するためには、「状態監視」が欠かせませんが、人手に頼れる時代ではありません。センサの活用が必要なのです。
 ところで、医療分野では、人体の計測値については、長年にわったて蓄積されており、年齢・性別・血液成分などの平均値や標準値、また各種計測値と体の異常との相関性などを分析した結果が整理されています。このため医師は、初診の患者に対しても標準値から乖離した項目を発見することで、病気の有無のみならず、病名や原因までをも推定し診断を行い、治療をすることができる環境にあります。

 電気設備機器においても同様ですが、人体の計測値データと比較すると、高調波設備診断でも、その測定結果と異常の部位や度合いとの相関性を分析・評価するデータが遥かに少ないという事実があります。例えば、電力インフラの中でも、複雑にネットワーク化されている配電系統の地中電線路がそれです。現在では、その線路のほとんどが絶縁体にポリエチレンを使用したCVケーブルが用いられていますが、その平均寿命(MTF)が28年とされているにも拘わらず、稼動から30年以上の経年年数のものも少なくありません。ケーブル事故は大停電にもつながりかねないのです。
 運転電圧が11KV以上の特別高圧CVケーブル、とりわけ22KV級ケーブルと77KV級ケーブルでは劣化形態が異なります。すなわち前者の故障は運転開始10年以上のものに多い劣化形であるのに対し、後者の故障は施工ミスなどに起因する初期故障的な破壊が多いのです。現在、当社では77KVCVケーブルの精度評価を、電気設備機器の劣化診断で実績をあげ、変わらぬ魅力を有している〔今月の キンモクセイの花言葉のような〕高調波設備診断技術で実施しています。



 
  キンモクセイ(金木犀)
  花言葉「変わらぬ魅力」

 
                                                  2014年10月3日
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