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2014年9月5日(金)

KS405−125
9月の社長メッセージ
   システムの安全制御をサポートする高調波設備診断
     〜「絶対安全」は幻、「コスト優先」を「安全最優先」に切り替えよう!〜

 近頃、プラントの爆発・火災、高速鉄道や大型旅客船などの事故が起こり、危険意識や安全知識の不足、安全管理体制の不備といった安全問題が指摘されています。現場では、安心しているところ、まさかと思うところ、危険の意識が薄れるところからトラブルが起きます。現場は、「うまくいかなくなる可能性のあるものは、うまくいかなくなる」というマーフィーの法則が適用される世界です。つまり、今迄は異常なく稼動している設備、確率的にトラブルが起こることは極めて小さい設備についても、適切な管理が必要になるということです。現場では、「安全は危険である」、「安全と思ったときには危険が迫ってきている」という意識が重要です。同じ事故が繰り返し発生しているプラントは論外ですが、「過去に事故がなかったから安全である」という絶対安全の論理は成り立たないのです。
 ところで、米国の保険会社の研究部長であったハインリッヒは、半世紀に渡る55万件の災害データを調査し、いわゆるハインリッヒの「300291」法則を、1931年に発表しました。この法則では、重大事故が1件発生する場合、その陰には29件の軽傷事故が起きており、さらに300件の潜在的な事故、いわゆるヒヤリ・ハット(ニアミス)事故が発生していると言います。
 またハインリッヒは、ニアミスを含む全ての事故の88%は不安全な行動、すなわち人的要因(ヒューマンエラー)であり、10%が不安全な設備、すなわち設備的要因にあるとしています。この事故原因の数値については、経済産業省が、2002年以降に発生した産業事故100件を対象に調査を実施し、その結果、人的要因によるものが76%、設備的要因は18%であり、残り6%が不明(調査中)であると、「産業事故調査結果の中間取りまとめ(200312月)」で公表しています。ただ、事故の発生要因は、業種によってその要因に濃淡があります。鉄鋼では、人的要因94.7%で設備的要因5.3%であるのに対して、化学では人的要因60.0%で設備的要因40.0%となっています。鉄鋼も化学も高温下で操業を行うものですが、化学の方が老朽化などの設備的要因による事故が多いのです。これは各ユニットが、多数の機器、配管およびパーツのコンポーネントである化学プラントと、単体機械である鉄鋼プラントの、設備的性格に起因していると見られます。
 「産業事故調査結果」の内容で特筆される点は、製造現場の安全確保について、経営トップの責任において実施することの必要性を訴えていることです。「対策の方向」として、第一に「経営トップの役割」をあげ、「経営トップから製造現場のすべての従業員に至るまで、安全・危険意識を高め、従業員一人一人の使命感や緊張感を持続させるとともに、必要なコストは企業活動において適切に負担するという『健全』な経営判断を通じて、産業事故の防止に最大限に努めることが何よりも重要」と指摘している点は、重視すべきです。経営トップしか、安全第一、コスト第二と明言できる人はいないのですから。

 しかし安全問題は、近年の産業の高度化、多様化の進展により、ますます複雑化し、設備の潜在危険が増大しています。例えば、高速鉄道や原子力発電などは言うまでもなく、大量のエネルギーを有している設備やシステムは、一度暴走して制御不可能になると、大惨事に至るのです。設備やシステムを安全に制御するためには、現代ではコンピュータを使って判断することが最も簡便で効率的な方法でしょう。しかしコンピュータには、ソフトウエアのバグ(欠陥)とハードウエアの故障が付きものであるため、重大な事故を引き起こす可能性があるということを認識しなければなりません。高調波設備診断は、安全制御のためのハードウエアの異常・劣化検出にも、大胆に〔今月の花 ナデシコの花言葉のように〕挑戦しているのです。
 




  ナデシコ(撫子)
 花言葉「大胆・才能」
  
 

 
                                                  2014年9月5日
来月のメッセージも是非ご覧下さい 
         


2014年8月4日(月)

KS405−124
8月の社長メッセージ
   社会基盤の災害事故防止に向けた高調波設備診断
     〜21世紀社会の鉄道インフラのメンテナンスは「富と誇り」がキーワード〜

 鉄道や道路などの設備や建造物などの広い意味での社会基盤(インフラ)は、人間が人間らしく生きるために欠かせない文明の装置であり、その安全や利便性は経済活動や生活行動に大きな影響を及ぼします。21世紀が環境の時代といわれる中で、エネルギー効率の高い鉄道に対する期待は大きいのです。より高い安全性と利便性を達成する鉄道メンテナンスの構築には、新しい技術の導入が不可欠と思われます。鉄道や道路などのインフラの充実のため、今迄に莫大な投資がなされ、その総額は公的なものだけで1000兆円に達するといわれています。
 
鉄道インフラでは、明治からその整備が進められてきましたが、道路建設に代表されますように、日本では高度成長期に建設されたインフラの数が極めて多く、それらは建設後40年以上経過しています。当時、まだ日本は貧困でインフラ欠乏状態であったこともあり、少ない材料でなるべく多くのものが出来るように、すなわち経済設計を誰もが疑わない状態でした。急いで作る必要もあり、また技術も未熟な面が多々ありました。従って、「質」という意味では、今から見れば問題があるのも多く、いろいろな意味で「疲れ」が出ておかしくない状況にあり、事実、兆候はいろいろなところに出ています。例えば、2012122日に発生した山梨県の中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故(死者9人)は、「日本のインフラは大丈夫」という安全神話の崩壊、インフラの脆弱性を浮き彫りにさせるものでした。
 このような状況の中で、鉄道インフラの課題は、迅速(Speed)、安全(Safe)、安心(Security)、そして万が一に生じた災害の救助や復旧を含めた高いサービス(Service)を提供することではないでしょうか。この四つのSがインフラとか都市・国土空間から見た21世紀社会の課題であるといえます。
 また、高齢化、過疎化の問題もメンテナンスに大きな影響を及ぼします。災害時に助けが特に必要なのが高齢者であることは最近の被災例を見ても歴然です。旅客数は今後大きな伸びが期待できず、また過疎になっていく地域の鉄道利用者が大幅に減少する可能性が高いのです。そのような状況の中で、地方部の鉄道インフラのメンテナンスは、都会部に比して費用や手間をかけられず、それをどのように効率的に行っていくのかもあわせて大きな課題となります。

 社会基盤系のインフラは、その供用期間が長く、代替が出来ないので、メンテナンスが欠かせません。鉄道の場合、道路に比べネットワークが出来たのが古いこともあり、メンテナンス体制は一応は確立しているとされています。しかし、今後のメンテナンスを考えるとき、@これまでのシステムが豊富な人的資源を前提としたところにあり、それが成り立たなくなること、A明治時代からの施設の老朽化がさらに進むこと、B安全性、快適性、高速性というお互いに相克する要求に応える必要が高まること、C大量輸送機関であり、災害事故防止に対する早期警報・危機管理システム、特にリアルタイム性を有したシステムの確立が必要となること、D公共性のあるインフラの安全性に関わる情報開示の要請が今後強まると予想されること、E優秀な人材確保のためには「メンテナンス」に対するイメージを刷新する必要があること、などの課題があります。
 
これらの課題で共通して言えることは、メンテナンス投資やリスクの定量化ということになります。高調波設備診断技術は、高調波電流のセンシング、分析、モニタリングまでをオンライン、リアルタイムで処理して、鉄道車両の状態やリスクを定量化することも可能で、投資の効果も見えるようになります。21世紀の鉄道インフラのメンテナンスは、「富」を生み「誇り」が持てる〔今月の花 オニユリの花言葉のような〕ものでなければならないと思っています。 




  オニユリ(鬼百合)
 花言葉「富と誇り」
  
 

 
                                                  2014年8月4日
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2014年7月4日(金)

KS405−123
7月の社長メッセージ
   高調波設備診断による安全化技術は社会安全への一里塚
     〜設備の安全神話は崩壊した!事故原因の76%はヒューマンエラーだ!〜

 最近、憂慮すべき事故に係る安全問題が起こっています。韓国高速鉄道KTXの信号無視をした列車が原因の三重衝突事故(20138月)、韓国旅客船の乗組員側の判断ミスと安全無視が原因の沈没事故(20144月)等、安全について基本に立ち返って考える必要があります。これらの安全問題は、その原因として、安全意識や安全知識の不足、安全管理体制の不備、安全倫理に帰する問題等があげられますが、その背景に、近年の産業の高度化、多様化、国際化の進展により、科学技術自身が内包する潜在危険とそれを扱う人、社会の大きな変化による潜在危険の増大およびそれらの質的多様化、複雑化があるように思われます。
 日本においては、数年前まで新幹線や原子力発電所の安全神話が罷り通るなど、絶対安全という考え方が支配的でした。確かに、それまでの日本はそのような考え方でなければならなかったし、潜在危険が存在しても、多くの場合、人の英知によりそれを克服し、安全の確保に努めてきました。しかし、東海道新幹線のパンタグラフ大破による電気火災事故(20101月)や山陽新幹線の保全不備による重要部品(ギアケース)脱落事故(20103月)など、一歩間違えれば大惨事になっていました。また、東日本大震災による未曽有の原発事故(20113月)は記憶に新しいところです。これからは、従来の絶対安全の考え方からリスクを基準とする安全の評価へ意識を転換し、安全化意識を持ち、安全知識を身につけ、安全行動をとれるようになるための安全教育を行っていかなければなりません。そして、重要なことは安全環境の整備です。安全環境の整備としては、設備診断を含む安全化技術の確立、安全性評価体制の確立、安全教育を行うことができる人材の育成等が挙げられます。
 安全(あるいは事故や災害)には、人間が関係する場合がほとんどです。人間に起因する多くの事故、いわゆるヒューマンエラーによる事故は、部品の劣化などの設備的要因で起こった事故より遥かに多く、全事故の76%にもなっているのです。このデータは、200312月に公表した経済産業省の「産業事故調査結果の中間取りまとめ」によるものですが、その1年後の200412月に「産業事故防止に向けた取組の進捗状況に関する調査について」を発表している内容は、事故への危機意識は深まっているものの、対策は簡単に低コストで実施できるものに限定されており、抜本的な対策については手付かずの状況を浮かび上がらせるものでした。

 ヒューマンエラーは、人間が果たすべきとされるシステム要求を人間が果たさなかったことであり、これは装置の運転を誤ったという場合はもとより、システムの設計を誤った場合、不適切なシステムの運用を行った場合なども該当します。更にそのような行為を行った理由として、錯誤、過失のみならず、故意、怠慢などによる場合も含まれます。システム要求と、人間の特質や能力とのミスマッチがあれば、ヒューマンエラーは生じるのです。故意、怠慢についてみても、“人間には危険を好む傾向がある”、“同様の事を長期に続けると行為の省略を行う”という人間心理を考えることなく、漫然と作業に従事させれば、起こるべくして事故は起こるのです。
 
高調波設備診断は、設備内部に発生するストレスをオンラインで計測することにより、設備の状態を沈着に〔今月の花 ハスの花言葉のように〕評価・判定する安全化技術の一つです。これにより、人間の特質や能力を補完し、システムの要求とのマッチングを図り、社会安全の実現に向けての一里塚になるものと確信しています。




  ハス(蓮:水芙蓉)
 花言葉「沈着・雄弁」
  
 

 
                                                  2014年7月4日
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2014年6月5日(木)

KS405−122
6月の社長メッセージ
   鉄道の安全性向上を目指す高調波設備診断
     〜高速鉄道の事故から学ぶ安全・安心の保全技術〜

 高速・大量輸送手段として始まった高速鉄道ですが、昨今、特に脚光を浴びているのは、CO2排出量の少ない環境適合性に優れているという点です。国土交通省の試算では、旅客輸送機関のCO2排出原単位(1人を1キロメートル運ぶ際のCO2排出量)は鉄道19グラム、航空109グラム、乗用車(営業用)388グラムとなっています。今は「環境の時代」という背景も有り、世界各国で高速鉄道計画が相次いでいます。しかし、高速鉄道が一旦事故を起こすと、予想を越えた事態を引き起こし、被害も甚大になるという事を忘れてはなりません。
 近年の高速鉄道事故の主なものとしては、@199863 ドイツICEの車輪外側の外輪破損が直接原因の脱線転覆事故(死者101名)、A2010129 東海道新幹線(300系)のパンタグラフ取付ボルトの締め忘れ(パンタグラフの大破、落下)による架線切断が原因の電気火災事故、B201033 山陽新幹線の保全不備が原因の重要部品(ギアケース)脱落事故、C2011211 韓国KTXの整備不良が原因の脱線事故、D2011723 中国CRHの信号システム不備が原因の追突・脱線転覆事故(死者40名)、E2013724 スペインAVEの速度超過が原因の脱線転覆事故(死者79名)、F2013831 韓国KTXの信号無視をした在来線が原因の三重衝突事故、などですが、この他にも数多くのトラブルが発生しています。
 その中で、保全技術に関係する高速鉄道の事故例として、死傷者が300名を超す大惨事になったドイツICEを取り上げ考えてみます。経過としては、ICE特急884号(ミュンヘン発ハンブルグ行き)が走行中、運転士が異常を感じて緊急停車し、点検したが異常は発見できずに運転続行。先頭の機関車から2両目の1号客車車輪(ゴムの緩衝材が挟まった二重構造)の一つの外輪が、車輪から外れ台車に引っ掛かった。陸橋手前の切替えポイントに差し掛かった時、1号客車の破損した外輪がポイントにぶつかり、衝撃で台車が回転し脱線。その衝撃で連結器が外れ、1号客車は先頭の機関車から切り離され、2号、3号客車も脱線。4号客車は陸橋通過後、線路盛土の右側に横転。陸橋は衝突の衝撃で崩落。陸橋の上に駐車していた自動車も事故現場に転落。5号客車の後ろ半分と6号客車は崩落した陸橋の下敷きになり、後続の車輌も折り重なるようにぶつかり合い大破したのです。原因は、@先頭客車の車輪外側の外輪が破損(直接原因)、Aメンテナンスでのミスジャッジ(定期メンテナンス時の点検ルールを無視)、B不具合検出システムの不備(車輪異常検知による緊急停止システムは設置せず)、としており、取られた対策は、直接原因の車輪の改造(二重構造から一体型に変更)だけでした。

 ICE事故から学ぶ教訓は、安全・安心のための保全技術の確立が焦眉の急という事です。すなわち、人間の感知が及ばないところは、適切なセンサシステムによる保全が有効になるのです。少なくとも駆動系としての車輪や車軸の異常を的確に検出するシステムの完備が急がれます。ただ単に、二重構造の車輪を一体型にするだけのような対策では、金属疲労による境界面の剥がれ破損はなくなっても、一体型車輪の摩耗や亀裂は経年的に発生し避けることができません。
 高調波設備診断によって、車輪や車軸を含めた駆動系のストレスや制御系の動作、車体の振動などの評価が可能となるのです。流線形の美しい〔今月の花 テッセンの花言葉のような〕高速鉄道が、脱線転覆して無残な姿となるような事故は、もうこれで終わって欲しいと願わざるをえません。




 テッセン(クレマチス)
花言葉「美しい・高潔」
  
 

 
                                                  2014年6月5日
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2014年5月7日(水)

KS405−121
5月の社長メッセージ
   安全文化の向上に役立つ高調波設備診断
       〜韓国旅客船の沈没から学ぶ安全の基本原則〜

 近年、プラントの爆発・火災等の産業事故や産業保安規制に係る検査不備等のコンプライアンス問題などの発生が目立っています。その背景には、多くの場合、事業者内における人的・組織的な要因、いわば事業者の安全文化に関わる問題が存在すると考えられます。安全文化とは、一般的には、安全を最優先にする組織や個人の気風・気質、といった意味で理解されています。現在の産業保安規制は概ね自主保安(保全)を中心とする規制体系となっていますが、これは換言すれば、事業者による自主的な取組みが安全確保のための極めて重要な部分を占めており、事業者には高い安全文化が求められるということです。
 
この安全文化を評価する視点として、(財)原子力安全研究協会は、平成173月にとりまとめた「原子力安全文化評価ガイドラインの検討に係る調査」において、次のような八つを基本とすることを提案しています。すなわち、@組織統率(ガバナンス):安全優先の価値観の共有。A責任関与(コミットメント):安全確保の責任。B相互理解(コミュニケーション):意思疎通の促進。C危険認知(アウェアネス):危険感知能力の高揚。D学習伝承(ラーニング):安全重視能力の獲得と伝承。E作業管理(ワークマネジメント):安全管理施策の整備。F資源管理(リソースマネジメント):安全確保のための人的・物的・資金的資源の管理。G動機付け(モチベーション):インセンティブ(やる気)を与えることによる安全向上の取組促進。などを基軸としています。
 安全文化の問題による事故は、その原因が当事業者の関連組織や個人に留まらず、一国の行政にまで遡り糾弾されることが少なくありません。その一例として、先月416日に発生した韓国旅客船(セウォル号)が転覆・沈没して死者264名、行方不明者38名(57日現在)という大惨事となった事故について、安全文化の見地から検証を試みたいと思います。
 原因としては、まず乗組員側の判断ミスと韓国船員法違反(船長は緊急時に際しては人命救助に必要な措置を尽くし、旅客が全員降りるまでは船を離れてはならない)。次に事故船については、改造と積載重量違反(最大積載の3.6倍の貨物)によって、船体の重心が上がり復原力が大幅に低下。そして運航会社(清海鎮海運)の安全無視の運航(頻繁な故障や衝突事故)。更に韓国船舶業界の安全責任意識の欠如(設備の検査結果の不具合放置)が指摘されています。加えて、韓国政府の対応の不手際も重なり、韓国のマスコミは自国を三流国と呼んでいる程です。

 安全文化は、原子力安全白書に拠れば、設備の劣化と同様な見方をすることができます。すなわち、安全文化の劣化兆候は第1段階(過信)、第2段階(慢心)、第3段階(無視)、第4段階(危険)を経て第5段階(崩壊・事故発生)まで進みます。韓国旅客船事故は、第4段階の現象である潜在的に過酷な事象が幾つか起きても、組織全体が内部監査や規制者など外部の指摘に対応しない結果、第5段階の事故が発生したもので、修復、改善には莫大なコストが必要となるばかりでなく、国政失墜は免れません。これが安全を度外視した結果の対価なのです。
 高調波設備診断は、安全文化の向上に役立つもので、設備の劣化兆候をリアルタイムで捉え、適切な対策を提示し警告するのです。“不幸な設備事故からの脱却”のために有効なこの技法を、設備産業界へ当社からの返礼〔今月の花 ハナミズキの花言葉〕にしたいと願っています。












 ハナミズキ(花水木)
花言葉「返礼・公平」
  
 

 
                                                  2014年5月7日
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                             エイテック株式会社


2014年4月7日(月)

KS405−120
4月の社長メッセージ(10周年記念号)
   「劣化の科学」に貢献する「高調波知的劣化診断システム」
       〜劣化メカニズムの解明に迫る高調波ストレス計測の歩み〜

 毎月発行している「社長メッセージ」も、今回が10年という節目を迎え感慨深いものがあります。設備診断とメンテナンスというテーマのもとで、120回のメッセージを通し、設備管理・保全技術の有り方を多少なりとも提案できたのではないかと思っています。次世代メンテナンスは、設備の劣化を科学的見地から捉えることにより、産業事故の危機を救うことができるのではないかという思いから、劣化現象について整理してみました。
 日本における社会インフラや産業設備は、1970年代から80年代の高度成長期からバブル期に建設、製造されたものが多く、これらはそろそろ30年から40年といった年数を迎えることになります。昨今の産業事故は様々な人的要因が指摘されているものの、その多くは材料の劣化が直接、間接的に関わっており、いわゆるバスタブ曲線における磨耗故障領域(時間的に進行する劣化により故障が顕在化する領域)を意識せざるを得ません。今後、これらの高経年劣化した施設、設備を計画的かつ合理的に維持管理していくことが必要です。そのためには、劣化現象を科学的に理解したうえで行う、リスクに基づいた検査やメンテナンス(RBI/RBM)が保全の合理化と費用低減に有効だと考えられます。さらに、劣化を防止・抑制するための費用と、劣化した設備・機器等を更新するに必要なエネルギー・資源・費用等を比較するとき、より高度な劣化の抑制・防止技術の開発に費用を投入する価値は十分にあります。また、社会インフラや産業設備における安全・安心の観点からも、これら技術の高度化は重要な課題です。合理的な保全技術は、省力化あるいはメンテナンスフリー化につながるため、ノウハウを有する団塊世代の大量退職に伴う労働人口減少(2007年問題)への対策としても有効と考えられます。
 従来、劣化に対する対策は工学的側面から経験的、その場対応的に個々に対処されてきていることが多く、科学的アプローチによる根本的、普遍的に対応し得る手法は、その努力の大きさに対して得られる短期的な効果が小さいと見られるために、置き去りにされているのが現状です。また、個々の劣化事例について企業内で保有する経験や知見があったとしても、ほとんど公開されないために共通的にその経験等が使われることはめったになく、個別の企業等が単独で高度な科学的アプローチをすることは困難な現状にあるのです。
 従って、劣化の科学を議論する際には、複雑現象の中から対象をいかに単純化して劣化現象をモデリングするかが大きな鍵となります。基礎と応用との結びつきによる包括的な現象理論の構築が、今後ますます必要となります。一方、劣化要因には複合作用もあり、現実の設備あるいは稼動状況への橋渡しも必要であり、これらを含めた全体像の把握が重要です。

 「高調波知的劣化診断システム」は、高調波信号に含まれる設備の劣化情報を、現象理論によって劣化の形態、原因を明らかにし、根本的な劣化の抑制・防止に役立つシステム技術なのです。この劣化現象モデルの策定に当っては、導体中の渦電流を分布定数系として表現し、劣化要因である熱ストレス、電圧ストレス、機械ストレス、環境ストレスにおいて、例えば熱ストレスは、物体を構成する原子間の相互作用に基づく熱振動(熱共振)として扱っています。すなわち、物性論を基礎とした視点から劣化を捉えているのです。設備内に発生するストレスの計測は、劣化のメカニズムを解析し、体系化する上で重要な技術となります。ストレスと劣化に対する懸命な〔今月の花 ユキヤナギの花言葉のような〕アプローチが、新しい保全技術を生み出し、「劣化の科学」に貢献することが期待できると思っています。




 ユキヤナギ(雪柳)
花言葉「懸命・自由」
  
 

 
                                                  2014年4月7日
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                             エイテック株式会社


2014年3月5日(水)

KS405−119
3月の社長メッセージ 
   電気設備の省エネルギーを支援する「高調波知的劣化診断システム」
       〜モータと負荷の「電力バランス」を評価して高効率モータを導入しよう!〜

 近年、エネルギー価格の上昇とエネルギー消費需要の急増に伴い、世界各国で省エネルギーの重要性への認識が急速に高まっています。そのような中で、日本でのモータによる電力消費量は全電力消費量の5割以上、産業用では7割以上も占めているのです。環境保全やエネルギーコストの抑制、さらに昨今では電力供給不安も加わり、高効率なモータへの期待はこれまで以上に高まっています。世界的には効率規制の導入が始まっており、日本政府も対応を急いでいます。
 世界的に、工業製品に一定の効率性を義務づける効率規制がモータの分野にも広がっていますが、米国ではすでに1997年からモータとモータを組み込んだ製品を対象としています。2010年からはより厳しいプレミアム効率規制(IE3)も導入されました。韓国のように効率規制の対象をギアモータまで広げる動きもあります。さらに2015年には欧州でIE3が始まる予定であり、日本でも経済産業省が2015年に、主要な産業用モータである三相誘導モータを、エネルギー消費効率の基準を定める「トップランナー基準」の対象にしました。
 一方、ハイブリッド車・電気自動車の普及などによって、車載用モータの市場なども一層拡大しており、経済産業省は次世代自動車向けに高効率モータ用磁性材料の開発に乗り出しました。このプロジェクトでは全く新しい磁性体を開発し、エネルギー損失を25%削減できる高性能モータを実現させるもので、これはレアアースを用いない新材料の開発となります。さらにモータの鉄心などに使用される新タイプの軟磁性材料も開発して、モータの磁束損失(鉄損)を80%削減し、モータの高効率化を進めるとともに発熱を抑え、放熱部品や冷却装置の簡素化・軽減も図るのです。
 日本国内における産業用モータは、年間需要が約680万台で、現在約1億台が稼動しています。これら全てを高効率モータに置き換えるのは導入コストの問題もあり、最も効果的なモータ更新を行うことが望まれます。そのためには、負荷を含めたモータ設備の効率を、モータと負荷の電力バランスの見地から考えることが必要です。すなわち、負荷が要求するモータ容量(高調波診断技術でいう「安定モード」)の設備であれば、そのまま同じ容量の高効率モータで置き換えれば省エネ効果が大きく効果的ですが、モータ容量が負荷容量より大きい「高位モード」の場合は、モータ損失が大きいので、高効率モータの容量を12ランク下げて取替え出来る場合が多くあります。一般的な電気設備は高位モードで稼動していますので投資効果も大きいと言えます。反対にモータ容量が負荷容量より小さい「低位モード」の場合は、負荷損失が大きくなって、それに見合う電力をモータに要求します。従って、そのままではモータの焼損につながることにもなり、インバータ制御などにより低位モードから安定モードまたは高位モードへシフトさせ、高効率モータを採用すればより効果的な更新となります。

 高調波診断技術による「高調波知的劣化診断システム」は、電気設備のモータ、負荷、インバータの各部位の異常・劣化具合いを診断・評価するリアルタイム・オンライン診断システムです。このシステムの特徴は、状態監視保全(CBM)のコア・ツールとなるばかりでなく、新しく「電力バランス」というモード情報を提供することにあります。高調波診断技術は、設備の異常・劣化診断と省エネ診断を統一〔今月の花 コトネアスターの花言葉〕させた、次世代診断技術となりうるものではないでしょうか。



 コトネアスター
花言葉「統一・安定」
  
 

 
                                                  2014年3月5日
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                             エイテック株式会社


2014年2月5日(水)

KS405−118
2月の社長メッセージ 
   故障ゼロを実現するための「高調波知的劣化診断システム」
       〜信頼性向上に向けて戦略的アプローチで予兆予知保全体制を築こう〜

 昨今の製造業を取り巻く環境は大きく変化しています。環境変化の中で最も大きなものがグローバル化です。特に、BRICsに代表されるコスト競争力に優れた新興国の経済的な台頭は、日本の製造業にとって過去に例を見ないコスト低減を迫っています。更に、企業のCSRとして環境負荷低減、CO2削減の取り組みや事故未然防止に向けた管理なども従来以上に厳しさが増しています。このような環境下では、製造業にとって低コストで設備の信頼性を高く維持することの重要性がますます高まってきていますが、製品のQCDQuality:品質、Cost:価格、Delivery:納期)のほとんどが設備で決まると言っても過言ではありません。従って、設備の信頼性が向上し、稼動率が向上することは製品の原価低減に対し大きな波及効果があり、経営にも大きく貢献するのです。そのために、設備の信頼性向上活動は、保全部隊だけでなく、生産部門、技術部門をも巻き込んだ全社的取り組みとして、より戦略的に実行することが求められます。
 すなわち、設備の信頼性が向上すると、ラインの稼動率が向上し限界生産能力を極限まで引き出せるようになります。その結果、ライン数の削減や工程数の削減、設備数の削減が可能となり、大幅な設備投資額削減につながります。また、これにより製造人員の低減や在庫削減、リードタイム短縮化、更には保全人員削減、エネルギー費削減と連鎖的に関連する多くの費用を低減させることが可能になります。この信頼性向上のためには、基本コンセプトとして“故障ゼロ”に徹底的に拘り、「戦略的アプローチで故障ゼロを実現」すること、そして「予兆予知保全体制を構築」することが望まれます。
 故障ゼロ化の要点は、過去に起きた故障の徹底分析により“真の原因”を追究し源流対策することと、今後起こり得る故障を予兆予知するための体制を仕組み化し、管理サイクルを継続的に実現することです。源流対策とは、単に故障した部品を修理復元することではなく、それが故障に至った真の原因を究明し対策を打つことです。故障ゼロ化活動は、また徹底した分析や改善を通じて人材をも育成します。故障ゼロ化活動は設備の信頼性を向上させ、企業の体力や競争力向上につながるのです。

 故障が発生するのは、設備に何らかの原因でストレスがかかっているからです。熱ストレス、電圧ストレス、機械ストレス、環境ストレスなどがそれです。これらのストレスが設備の強度を超えた時に故障が発生します。すなわち強度不足、ストレス放置、そして劣化の進行です。よって故障ゼロにするためには、ストレス量を把握し適切な対策を講じなければなりません。ストレスが起こる直接的原因としては、基本条件の不備、使用条件を守らない、潜在的劣化の放置、運転・保全のスキル不足、そして設計上の弱点内在の五つが挙げられます。従って、これらを解決することが故障ゼロ化へのキーポイントになります。
 故障に至る潜在的劣化は、設備が動いている限り進行します。この潜在的劣化の要因である“ストレス”、つまり“予兆”を計測・診断することで、設備を故障から防衛〔今月の花 ピラカンサの花言葉〕できます。まさに、「高調波知的劣化診断システム」をコアとした保全こそ、故障ゼロ化に向けた予兆予知保全に他ならないのです。




 ピラカンサ
花言葉「防衛・燃ゆる想い」
  
 

 
                                                  2014年2月5日
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                             エイテック株式会社


2014年1月7日(火)

KS405−117
1月の社長メッセージ 年頭の挨拶
   2014年度 エイテック標語 3C〔Cost(費用)・Condition (状態)・Check(評価)〕
       〜費用が嵩む工場事故を設備の状態を把握し評価する高調波診断システムで防ごう〜

 新年あけましておめでとうございます。
 最近、日本を代表する大企業で事業存続に影響する工場事故が頻発しており、これまでの設備管理の不備が指摘されています。しかし工場事故の頻発は最近に限ったことではなく、特に戦後の高度経済成長期の製造業では技術の進歩に合わせた大型化、複雑化に伴い、社会に影響する事故も発生していました。大規模の事故が発生すると、災害から国民の生命、身体、財産の保護を求める世論の要求に、政府機関は法規制の強化を適宜行ってきました。それがいつの間にか事故を発生させない規制を基に、規制を満足しておれば事故は起きないという安全神話を生み出したのですが、その論理は成立しません。社会は常に利便性を求め、新しいものを創出してきましたが、それに伴う想定外の危険性も併存します。結局、規制が過多となり規制側による安全徹底が困難になりますので、産業界自らが自主的かつ継続的に安全性向上のためのシステムを構築することが有効な対策となります。
 
国際的な動向は、人はミスをする可能性があることを前提に、危険源を洗い出して、リスク評価から妥当な許容レベルへの対応をとるリスクアセスメント、説明責任を伴う自主的な安全確保です。欧米では、1976年に発生したイタリア・セベソでの農薬工場の爆発事故(猛毒ダイオキシン放出事故)を受け1980年代から取り組んでいますが、日本では規制強化による絶対安全を目指し、なかなか浸透していません。
 福島第一原子力発電所の事故を契機に「確率論的リスク評価」の手法に取り組むプロジェクトの発足など、機運は高まりつつあります。定量的リスクの算定には、発生確率のデータが必要であり、設備の状態を把握し評価することが前提となり、有害な欠陥や劣化の前兆を的確に抽出する予知診断技術が求められています。
 日本では建設後40年を超える生産設備も稼動しており、高経年化による劣化の顕在も多岐にわたっています。建設時から熟知した人材の退職で、製造業は設備と人材の高経年化で安定操業の確保に困難な状況に直面しています。死傷者を伴った最近の事故調査の結果では、設備面だけではなく、人に関わる人材育成、情報の共有、技術伝承の欠如やリスクアセスメントの不足を問題視しています。劣化を含め異常の兆候を見逃さないシステム作りと共に、危機意識を持った風土作りも事故防止に欠かせません。

 今求められているのは、設備管理のマネージメントです。これまで多くの設備管理の強化や改善を図る活動が展開されてきていますが、不幸なことに多くはその場限りの活動となり、モデル化されていません。良い結果を得た活動でも、その展開を図る際には、神髄となるところが誤解され、あるいは実行するのに都合の良いように変えられ、中途半端になることが多く、再現性に欠ける要因となっています。
 
設備管理のマネージメントは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)のPDCAにより整理でき、PDCAをきちっと回すことにより安全性、信頼性、さらには最適なコストも達成できるのです。常に現状よりの向上を考えPDCAを回すことができれば、達成される設備管理のレベルは計り知れないものとなります。徹底して連続性のある向上が可能な、親しみのもてる〔今月の花 ヤツデの花言葉のような〕システムの構築には、予知保全の「高調波診断システム」が適で、事故防止の企業風土の観点からも重要なシステムとなり得るでしょう。




 ヤツデ(八手)
花言葉「親しみ・固い絆」
  
 

 
                                                  2014年1月7日
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2013年12月5日(木)

KS405−116
12月の社長メッセージ
   次世代の鉄道車両メンテナンスに資する「高調波知的劣化診断システム」
          〜鉄道の経営合理化と車両の安全性・信頼性の向上を目指して!〜

 鉄道は公共交通機関として生活と経済活動を支える社会基盤(インフラ)であり、その安全性や信頼性の向上が求められています。21世紀が環境の時代といわれる中で、エネルギー効率の高い鉄道に対する期待も大きいのです。人口減、高齢化、都市への集中化という難しい状況を踏まえつつ、世界をリードする効率的な鉄道メンテナンスの構築が待たれています。
 現在の鉄道車両検査は、その構造及び保全方法の種別に応じ、国土交通省令に準拠した「車両実施基準」で定められた、検査周期と検査項目を、車両工場(メンテナンスセンター)や検修区・検車区(車庫内)にて実施しています。検査のうち車両工場で行う全般検査(8年毎)と重要部検査(4年以内、走行キロ60万キロ毎)は、主電動機、補助回転機や制御装置、駆動装置などの主要部分を取り外し、全般にわたって測定、探傷、絶縁測定検査を行います。また車庫内で行う月検査は、3ヶ月を超えない期間毎に各部の状態・機能について行う検査と、車両の重要部分について10日を超えない期間毎に目視検査する列車検査があります。その他に特別な検査として、新製車両納入後の機能検査、ならし試運転や脱線・運転事故が発生した車両で故障発生の恐れの疑いがある場合、さらに改造・修繕を行ったとき、何らかの都合で車両の使用を休止した場合に、車両の一部または全般にわたりその状態及び機能について臨時に施工する臨時検査があります。
 これまでの鉄道メンテナンスは、一定の期間経過と共に検査・修繕を実施する時間計画保全(TBM)が主流でした。しかし、列車装置の摩耗・劣化によるシステム故障の確率は、バスタブ曲線で知られるように初期故障、偶発故障及び摩耗故障に至るもので、「故障は起きない」とは断言できないのです。また時間計画保全は、正常な装置までも分解・検査・交換することに伴って、据付や芯出し不良などにより発生する初期故障(いじり壊し)の増加、更には人手と時間、経費がかかり、費用対効果は決して良い方向には向かわないと言えます。

 今後の鉄道メンテナンスは、列車装置の状態を車両の運行中に捉え、その内部で発生している劣化の兆候をオンライン、リアルタイムで評価する予知保全、いわゆる状態監視保全(CBM)が期待されます。状態監視保全が目指すところは、鉄道車両の安全性・信頼性の向上に加え、メンテナンスコストの低減と車両運用の効率化による鉄道経営の合理化です。具体的には検査周期と検査項目を、劣化の兆候が予知される車両のみを対象にすることですが、その手順として、まず検査周期の延長によるメンテナンスの信頼性を確立するのが近道でしょう。検査周期は、車両技術と検査技術の向上によって、過去に何度か延長されてきた経緯があります。そのためには、運行車両の性能データを取得するモニタリング・システムとセンサ・ネットワークの構築が望まれます。
 当社の「高調波知的劣化診断システム」は、主電動機に流れる高調波電流のセンシング、分析、モニタリングまでをオンライン、リアルタイムで処理して、列車装置の異常や劣化の前兆を評価します。特にKS-7000システムは、鉄道車両の安全〔今月の花 センニチコウの花言葉〕と、信頼性を高めるマルチセンサ・一元管理システムであり、魅力ある次世代の鉄道メンテナンス技法を提供するものです。



 
   センニチコウ(千日紅)
 花言葉「安全・不朽」

 
                                                  2013年12月5日
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2013年11月1日(金)

KS405−115
11月の社長メッセージ
   PAMシステムの中核を担う「高調波知的劣化診断システム」
          〜プラント設備の最大効率化によって企業経営の効率改善を目指そう!〜

 プラント設備を、資産管理の最適化の観点から評価・保全管理するPAMシステムに熱い視線が注がれています。このシステムは、1999年に米国のオートメーション関連の調査会社であるARCアドバイザリーグループが提唱したプラントの資産管理全般を行うPlant Asset Management Systemで、プラントの資産管理システムを総称したものです。主要な機能は、状態管理、保全管理、信頼性管理で、これらは互いに統合され、生産システム(プロセス制御)やビジネスシステムとも合わさる機能を持つもので、診断技術を中心とした設備の延命化を含むプラント設備資産管理システムです。目的とするところは、プラント設備の最大効率化による企業経営の効率改善、つまり利益の最大化にあります。
 日本においては、従来からベテラン保全員の並々ならぬ細かいケアにより、プラント設備の高い信頼性と低いトラブル発生率が保持されてきた経緯があります。一方欧米では、保全員のスキルに頼らないで、プラントの異常は自動検知・自動シャットダウンする方法が主流です。そのためにプラントでは、必要なセンシングシステムを標準で採用するところが大半となっています。これらの事情から欧米では、配置されている常設センサからの情報と、プラント設備の運転パラメータや経理(燃料コストや販売価格など)をシステムで組み合わせて、プラント設備を最適効率条件で運営する方法が、いわゆるPAMシステムとして位置付けられているわけです。
 PAMの機能構成は、色々な組み合わせが可能ですが、一般的には設備資産状態管理(Asset Condition ManagementACM)と設備診断システムを核として、保全業務を支援する設備管理システムと合わせて構成されています。ACMシステムは、プラント設備から実データと計算データを収集し、設備の状態を診断ツールにて評価して不具合を特定します。収集された情報は、別のシステムに送られ問題の深刻度と対応策の情報を提供します。火力発電所や化学工場などの大規模なプラントでは、トラブルの回避、即時対応の面から、CBMCondition Based Maintenance)技術を生かした常時監視システムが必要になってきます。

 そこで、PAMシステムの新たな発展として期待されているのが、設備の性能・効率・エネルギーの監視診断技術です。例えば、ポンプなどの流体機械のライフサイクルコストを見ますと、エネルギーコストが95%と最も高く、次いでメンテナンスコスト5%、減価償却1%となっています。ライフサイクルコストの観点から、設備監視診断技術を省エネルギー目的に使用したいというニーズがあります。すなわち、ポンプの圧力、流量などを常時監視して、オンラインで効率を計算し、常に最高効率で運転することによりエネルギーコストを削減しようとするものです。このように、設備の運転情報を監視して、プラント設備の高効率運転を目指すシステムとしての機能が、PAMシステムには必要になってきます。

 エイテックの「高調波知的劣化診断システム」KSシリーズは、設備の状態を診断・評価して不具合を特定し、問題の深刻度と対応策の情報を提供するだけでなく、設備のエネルギーバランスの計測から、省エネ性能の向上を図ることが可能な、知恵の〔今月の花 サルビア・ガラニチカ(ハーブ)の花言葉のような〕システムなのです。PAMシステムの中核を担うこの診断ツールは、高調波技術が生み出した保全の寵児ではないでしょうか



 
   サルビア・ガラニチカ
 花言葉「知恵・燃ゆる思い」

 
                                                  2013年11月1日
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2013年10月4日(金)

KS405−114
10月の社長メッセージ
   「高調波知的劣化診断システム」は経営戦略的設備管理の中枢
          〜保全の科学的合理性を追求し、工場の危機を救おう!〜

 近年増加している工場設備事故の主要な原因は経年劣化です。背景には、高経年設備の増加、団塊ベテラン層の減少、中堅・若手への技能伝承の遅れ、保全費用の圧縮など複合的な要因が挙げられます。ひとたび事故を起こせば、装置や機器の修繕費以上に大きな被害をもたらすのは、工場が停まることに伴う機会損失です。そのため、経営的視点だけで判断すれば、工場の操業を停止させないことが重要です。もちろん事故を起こせば、近隣住民に迷惑をかけ、ひいては社会的信用を失うことにもなります。最近のようにCSR(企業の社会的責任)が重視される時代にあって、事故で失うものは、修理や修繕に費やすコストだけではありません。事業機会や社会的信頼なども失う可能性があります。場合によっては、長年にわたって獲得してきた市場や顧客までも失うことだって十分に考えられます。つまり最も重要なことは、安定的に操業を維持することなのです。工場の操業を停めないためには、日頃から設備をいかに維持管理するかがポイントになります。
 米国では日本に比べて早くから設備の維持管理基準の検討がなされてきました。米国機械学会(ASME)では圧力容器に関して、石油学会(API)では石油プラントの維持管理規格について検討・制定されてきましたが、最近では両者の合同委員会なども進められ、ASME及びAPIとも維持管理規格の体系が整備されてきたと言えます。日本においても、原子力発電の維持管理規格が日本機械学会(JSME)により2000年に制定されました。これにより規制緩和の動きと共に、設備の自主保全の動きが加速されてきています。この規制緩和と自主保全によって、形式的や建前論に片寄りがちな安全規制から実効性を重視した安全規制への転換が促進されることとなり、そのためには、安全の根幹である保全の科学的合理性の追求に一層努めることが必要になってきます。
 経営戦略的な設備管理とは、工場設備という資産を効率よく活用するための資産管理という概念で捉えられます。そして設備管理の目的が、ステークホルダーの利益の最大化にあることを考えあわせますと、
ROAReturn on Asset:純資産利益率)の最大化を目指す設備保全こそが経営戦略的な設備管理と言うことができます。事故などで設備が停まるような事態になれば、結果的にROAを悪化させることになり、企業収益を圧迫しかねません。つまり設備保全は、従来のような事故が起こった時の「修理・修繕」ではなく、生産性の向上手段と捉えるべきなのです。このことはとりもなおさず「壊れたら直す」というような考え方ではなく、「壊さないように、運転する」、更に一歩踏み込んで「事故を起こさないように、リスクをコントロールする」という考え方が必要なのです。そのために部品や機器を個別に管理し、必要な時期に検査や交換を行うように考え方を変えなければなりません。

 設備産業界では、ライフサイクルコストを下げるため高経年設備の管理が重要な課題になっています。このような設備を、従来の方式で対処しても故障を十分に防ぐことは難しいので、今後は、潜在的劣化現象を遅れ〔今月の花 フジバカマの花言葉〕なく把握して対応することが必要になります。それを可能にした「高調波知的劣化診断システム」は、経営戦略的設備管理の中枢に位置付けられるツールになり得るものではないでしょうか。



 
    フジバカマ(藤袴)
   花言葉「遅れ・ためらい」

 
                                                  2013年10月4日
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