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2012年9月6日(木)

KS405−101
9月の社長メッセージ 
    「高調波知的劣化診断システム」による社会安全への提言
          〜人間の特質や能力を補完しシステムの要求とのマッチングを図ろう!〜

 最近、種々の事故や安全問題が起こっています。JR東海道新幹線「こだま659号」のパンタグラフの大破・架線切断事故(20101月)、JR山陽新幹線「のぞみ56号」走行中のギアケース破損事故(20103月)、中国東部浙江省(温州)での高速鉄道の脱線・転落事故(20117月)、三井化学岩国大竹工場のプラント爆発・火災事故(20123月)、そして東日本大震災による未曽有の原子力発電所事故(20113月)は、世界を震撼させました
 これらの安全問題は、その原因として、安全意識や安全知識の不足、安全管理体制の不備、安全倫理に帰する問題等があげられますが、その背景に、近年の産業の高度化、多様化、国際化の進展により、科学技術自身が内包する潜在危険とそれを扱う人、社会の大きな変化による潜在危険との増大及びそれらの質的多様化、複雑化があるように思われます。
 日本の風土としては、これまでは安全神話が罷り通り、絶対安全という考え方が支配的でした。確かに、これまでの日本はそのような考え方でなければならなかったし、潜在危険が存在しても、多くの場合は人の英知によりそれを克服し安全の確保に努めてきました。しかし、最近の科学の急速な進展、人や社会の大きな変化を考えたとき、安全の確保のためには、まず、安全は我々の生活にとって基本要素であるという共通の認識を持ち、次に、従来の絶対安全の考え方からリスクを基準とする安全の評価へ意識を転換し、安全化意識を持ち、安全知識を身につけ、安全行動をとれるようにするための安全教育を行うことです。そして重要なのは安全環境の整備です。安全環境の整備としては、設備保全を含む安全化技術の確立、安全性評価体制の確立、安全情報提供体制の確立、安全化技術教育を行うことができる人材の育成等が挙げられます。
 社会の安全要求は一般にリスク(危険)として評価されますが、リスクは、事故の発生確立と事故の被害度の積として評価されます。社会が受容するリスクの大きさは定まったものではなく、設計対象物の性質はもとより、その社会の安全文化の程度などにより異なります。設計対象物との関係でいいますと、一般に原子力発電所やプラント、鉄道など、ひとたび事故が起こると広範囲に多大な損害をもたらす事象には、社会はより厳しい要求を求める傾向があります。従って、潜在的なリスクが顕在化することの予知は、事故の抑制に極めて重要になります。ただ、この潜在的なリスクが顕在化する確率が低いために、かなり無理をしても事故・災害にはならないことが多く、慣れや気の緩みが生じ易く、安全への取り組みが疎かになっているのも事実です。 

 安全(あるいは事故や災害)には、人間が関係する場合がほとんどです。人間に起因する多くの事故は、人間の特性(特質や能力)を超える要求を、システム(あるいは設備)が人間に課したがために、起こるべくして起こったことも少なくありません。システムの要求と人間の特性とのミスマッチがあれば、人間はシステムの要求を果たすことはできないのです。故意、怠慢についてみても、“人間には危険を好む傾向がある”、“同様の事を長期に続けると行為の省略を行う”という人間心理を考えることなく、漫然と作業に従事させれば、事故は必ず起こります。「高調波知的劣化診断システム」は、人間の特性を補完し、システムの要求とのマッチングを図るシステムであり、社会安全に向けて、事故に対する警戒〔今月の花ケイトウの花言葉〕を怠らせることのない重要なツールとなるでしょう。












  鶏頭(ケイトウ)
   花言葉「警戒・個性」

 
                                                  2012年9月6日
来月のメッセージも是非ご覧下さい 
                             エイテック株式会社



2012年8月3日(金)

KS405−100
8月の社長メッセージ (100回記念号)
    「高調波知的劣化診断システム」は先導的予知保全技術の礎
          〜次世代のプラントの安全・安心操業の実現をめざして〜

 2011311日の東日本大震災の惨禍により、日本全体の安全意識は大きな変革を求められています。本来、自然災害による破壊的被害対策は保全活動の対象外かもしれませんが、今回の震災の発生により、大規模プラントの社会的使命と責任においては、あらゆる事態に「想定外は許されない」ことを再認識させられました。プラントの安全・安心確保とそのための保全技術は震災前から重要課題でしたが、安全神話が崩壊した今、プラントの保全活動は一から見直す必要があるのではないでしょうか。技術の進歩と多面的な安全対策にもかかわらず、プラント火災などの災害のニュースが後を絶ちません。高圧ガス事故統計資料や消防白書によりますと、近年の事故の増加傾向が数量的に把握できます。事故原因の半数近くは設備劣化、故障などの物理的要因(49.2%)、次に判断ミスや操作ミスなどの人的要因(47.5%)が事故につながっていると報告しています。高圧ガス保安協会の調査では、2000年以降も製造事業所における事故件数は増加していることを確認しています。
 先進国で最も老朽化したプラントが稼動する日本。いつどのような甚大なプラント事故が勃発しても不思議ではない現状を鑑み、安全文化や保全哲学、保全技術などについて、毎月の「社長メッセージ」の中でお話をして参りました。20045月より始め今回が100回目の記念号に当たりますが、中でも2006111日に「高調波知的劣化診断システム」を商品化し、世界初となる電気設備診断のASPサービスを開始し注目されています。これは、電気機器の異常・劣化の原因(ストレス)を診断し、対策までも即座に提供する画期的な予知保全システムであり、次世代の保全技術の礎と言えます。その間、ユーザーとの共同開発などを通して実用性を高め、技術評価する活動を行って来ました。本号では予知保全技術の課題と産業界の安全・安心実現への提言としてまとめてみます。
 
第一に危険意識の欠如です。現場では、安心しているところ、まさかと思うところ、危険の意識が薄れるところからトラブルが起きます。現場は、「うまくいかなくなる可能性のあるものは、うまくいかなくなる」というマーフィーの法則が適用される世界です。つまり、今迄は異常なく稼動している設備、確率的にトラブルが起こることは極めて小さい設備についても、適切な診断が必要になるということです。現場では、「安全は危険である」、「安全と思った時には危険が迫ってきている」という意識の徹底が重要です。同じ事故が繰り返し発生しているプラントは論外であり、責任回避の「想定外」という言葉は禁句です。
 第二に診断結果の信頼性です。多くの予知保全技術は、直接目視確認できない事象を何らかのセンシング技術で推定するものが多く、必ずしもその検出結果と事象が一致しないことがあります。つまり、劣化を検出する診断精度が100%でないため、一度の診断結果だけで、劣化の進行を予測することは難しく、その信頼性向上には結果の傾向管理と実証データの積み重ねが求められます。

 第三に導入コストと効果のバランスです。高調波技法のような新しい技術は、広く普及する前は導入コストが高くなりがちですが、その導入費用対保全費用削減効果が見合わなければ導入に踏み切れないという実態があります。
 
これらの課題は、一部の先進的技術者がある程度のリスクを許容し、チャレンジしなければ乗り越えることができないため、ユーザーと診断機器のベンダーだけでなく、プラントの安全を守る行政機関の協力を得て克服でき、強運〔今月の花 アベリアの花言葉〕を呼ぶ先導的予知保全技術として普及することが期待されます。












  アベリア(ハナツクバネウツギ)
   花言葉「強運・謙譲」

 
                                                  2012年8月3日
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                             エイテック株式会社



2012年7月6日(金)

KS405−099
7月の社長メッセージ 
    「高調波知的劣化診断システム」は収益改善のための攻めの保全
          〜時間計画保全から脱却しプロアクティブ保全で状態監視を行おう!〜

 設備管理のツールとして設備診断技術を現場に導入し、保全レベルを向上させるという考え方が広く普及してきました。高度成長期に建設された多くの設備で老朽化が進むことによる保全の重要性の高まり、現場の点検・整備技能の伝承、トラブルフリーによる生産性の追求、保全コストの削減など、そこには様々な背景があります。設備は、同一設計仕様であっても、それぞれ異なる個性を持っています。まったく同じ性能を持つ設備はありません。それは稼動条件や環境が違うために、設備内部に発生するストレス現象に差が生じるからであって、そのため運転状態も正常運転か異常運転かによって、設備の劣化速度に大きな差が生じます。正常運転の設備の劣化は緩慢となり、適切なタイミングで点検を行い、不具合個所を修理することで設備の機能を維持することができます。しかし、異常運転の設備の場合、従来技術による劣化検出限界から必要機能を喪失するまでの期間が短いので、劣化検出が難しく、また運よく検出できたとしても設備の機能を喪失する前に修理が出来るとは限らないのです。しかし、高調波診断技術を用いれば、ストレスによる潜在的劣化検出が可能なため、機能喪失までの期間が長くなり、有効な保全対策の実施が可能となります。
 今までの予防保全としての設備診断技術の中で、状態監視保全(CBM)の有効性が理解されておりながら、劣化の進行が観測可能を前提としていることと、膨大なデータ管理を必要としているため、普及の妨げになっていました。そのために予防保全のもう一つの方式である時間計画保全(TBM)が、時間軸で保全が出来る簡便さ(診断作業、コストが不要)から広く採用されてきましたが、この方式の寿命設定の方法は、故障物理に基づく計算寿命もしくは過去の実績に基づく経験則を利用するため、個々の要素部品について設定寿命の妥当性を評価することが困難であることに加え、運転条件の変化に対応できず、過剰保全や寿命前の故障(突発故障)が頻発しています。米国のボーイング社での調査結果では、89%の要素部品が時間に依存しないトラブル発生傾向を示したとされ、「TBMは根拠に乏しく信頼性が低い」と報告しています。具体的な例として、転がり軸受のTBMにおける寿命設定を検討してみますと、最長寿命は最短寿命の50100倍に達することが知られています。このばらつきは、劣化モードである転がり疲れが要素部品の個体ごとにばらつくことに起因しており、軸受カタログに示される定格寿命は、この転がり疲れに対する90%信頼度寿命で与えられています。しかし、軸受の劣化モードが転がり疲れであるとは限らず、例えば潤滑油中や軸受転送面にコンタミナント(汚染物質:鉄粉などの固体粒子や水など)が侵入すれば劣化モードは表面疲れとなり、転がり疲れから設定した寿命の数十分の一以下で機能劣化が始まるとされています。

 TBM方式を採用し、要素部品の個体ばらつき、多様な劣化モード及び使用条件を考慮した場合、過剰に修理工事が行われる傾向が強くなりますが、これはまた修理ミスや軸受不良による初期故障の増加をもたらし、逆に信頼性を低下させ、非稼動時間や工事コストを増加させることになります。
 従って、これからはTBMから脱却し、劣化要因を排除することで設備の劣化遅延・長寿命化をはかるCBM、とりわけプロアクティブ保全が重要なのです。エイテックの「高調波知的劣化診断システム」は、大望の〔今月の花 タチアオイの花言葉〕収益改善のための攻めの保全、すなわちプロアクティブ保全のツールと言えます。













立葵(タチアオイ)
 花言葉「大望・高貴」

 
                                                  2012年7月6日
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                             エイテック株式会社



2012年6月5日(火)

KS405−098
6月の社長メッセージ 
    プラントの劣化や故障を防止する「高調波知的劣化診断システム」
          〜安全・安心と経済性の両立はプロアクティブ保全から〜

 プラントの一生は、人生のそれと似通っており、対比して検討することは意義があります。人の健康管理では、可能な限りの予防と、適切な定期健診による病気の早期発見、発病時の必要な治療と再発防止が健康・長寿の基本です。プラントの維持管理でも、計画保全の構築(現状評価と適切化)と、運営(検査・診断)による設備の異常・劣化の早期発見、異常・劣化時の必要な対策(整備・修理)と再発防止(プロアクティブ保全)で、安全・安心と経済性を両立させながらの設備管理が可能となります。
 プラントは、一度劣化が始まると経時的に劣化が進行します。その上、劣化を検出する診断精度は100%でないため、一度の診断結果だけで、安心したり寿命を見極めることは難しいのです。さらに、プラントで発生する事故の原因は、「設計不備」、「施工不良」、「整備不良」、「経年劣化」、「運転条件の逸脱」、「運転中の過大ストレス」など多岐にわたり、いつでも同じ条件で事故が発生するとは限らないのです。また、設備は必ずしも設計条件通りに稼動し負荷を受けているわけではなく、設計条件からはずれた状態で稼動し、予想外の負荷を受けていることもしばしばであり、あらかじめ決められた維持管理を行っているだけでは、事故を皆無にすることはできません。
 米国のデュポン社によりますと、保全はプラントにおいて制御可能な最大の経費部門と位置付けており、多くの企業でそれは年間の企業利益を超過しています。このような保全コストを削減するためには、設備そのものを劣化させないことが重要であるとの考え方で、劣化や故障を防止するための事前防止保全、いわゆるプロアクティブ保全(PRMProactive Maintenance)が必要になります。これは整備後の設備故障の再発防止であり、医学に例えますと、治療後の投薬や透析などで病気の再発を防止することに相当します。いくつかの欧米企業で、このプロアクティブ保全を導入し、劇的な保全コストの削減に成功していることを、米国のオートメーション関連の調査会社ARCアドバイザリーグループが報告しています。また、EAM(設備管理)システムベンダーのインダス・インターナショナルによれば、「予知保全(PDMPredictive Maintenance)は故障の徴候を監視し除去するが、プロアクティブ保全は故障の原因を監視し除去する」としています。すなわち、プロアクティブ保全は、設備の損傷や故障の原因パラメータであるストレス(熱ストレス、電圧ストレス、機械ストレスなど)を検出し、それを取り除くことにあるといえます。従って、その基本フィロソフィーは機器寿命延長のための保全活動にあります。従来のように、故障していないのに安全のため分解・整備したり、定期保全の名のもとに故障修理を先取りするといった保全は排除しなければなりません。

 具体的故障事例として、モータ巻線のレアショートのような突発的絶縁破壊の事前防止は、メガ法による絶縁診断などでは発見できず、その原因である巻線の局部過熱により発生する熱ストレスを的確に捉える必要があります。巻線の局部過熱によって、第3次高調波や第5次高調波などの奇数次高調波が際立って発生します。従って、それらを検出・分析することにより、巻線絶縁の劣化度合いを判定して、必要な対策を明示する「高調波知的劣化診断システム」は、名誉ある〔今月の花  オオデマリの花言葉〕プロアクティブ保全の先駆けと言えましょう。













大手毬(オオデマリ)
 花言葉「名誉・誓い」

 
                                                  2012年6月5日
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                             エイテック株式会社



2012年5月1日(火)

KS405−097
5月の社長メッセージ 
    産業プラントの異常・劣化診断を担う「高調波知的劣化診断システム」
          〜繰り返されるプラント事故を高調波技法によるオンライン診断で止めよう!〜

 去る322日午前215分頃、三井化学岩国大竹工場のプラントが爆発、火災が発生しました。爆発火災が起きたのは、タイヤなどに使う接着剤の原料「レゾルシン」の製造設備で、周辺住民を含め22人の死傷者が出るという大惨事になりました。火災の鎮火は23日午後230分、事故から36時間経った後です。同工場では1984年に爆発事故、2003年にも火災が起きており、住民からは「またか」と憤りの声が上がっています。このプラントでは事故が繰り返し発生しているのです。同社の工場長は「想定外の爆発が起こった」と話していますが、昨年発生した福島第一原子力発電所の事故の時も、責任者が「想定外」と言ったことを思い起こします。「安全・安心」に「想定外」はないのです。事故の原因調査はこれからですが、同社の幹部の説明によりますと、工場内の電気設備に異常、不具合が発生したとしています。なぜ異常が事前に発見できなかったのか、徹底的に究明する必要がありますが、電気設備の潜在故障を把握できなかったことには間違いないと思います。
 産業プラントや社会インフラを長期間安全に使用するためには、異常・劣化の種類、場所、程度を正確に計測、診断し、損傷の発生する時期を精度よく予測することが重要であり、従来の対象別の経験的な検査・診断技術に代わり、劣化現象・要因解明に遡った異常・劣化管理技術が必要となります。異常・劣化の進展を予測し、その程度がどのくらいになれば損傷・破壊するかの診断ができれば、繰り返されるプラント事故の発生を抑止することが可能です。
 日本の産業プラントや社会インフラは、現在世界でも有数のストックを有していますが、高度成長期を中心に建設され、既に20年ないし30年以上経過したものが多く、今後これらの劣化が大きな社会リスクとなります。しかし、設備の更新には膨大な費用を要するため、合理的に維持管理しながら安全を確保しつつ長期間使用することが求められます。現状では、設備を止めたオフラインの状態で絶縁劣化状況を含め定期的に診断し、設備を保守することが行われてきていますが、設備を止めた状態と運転中の状態とでは稼動環境が異なるため、オフライン診断は潜在故障の発見には不向きなのです。更に、運転停止による逸失利益や停止のための予備設備の設置を含めた診断・保守に要する費用は膨大です。一方、中国等電力需要が急速に伸びている国では、電源余裕がなく運転を停止できず、オンライン診断せざるを得ないこともあり、オンライン診断の要望と普及活動は日本より活発です。今後は日本でも、潜在故障の診断・保守の信頼性向上や費用低減のためにも、オンライン診断の必要性が高まることは疑う余地もありません。

 当社の高調波技法による「高調波知的劣化診断システム」は、設備内で発生しているストレスを捉えるオンライン診断技術であり、潜在故障を含め設備の異常・劣化状態を予測し、余寿命を精度良く推定することができます。正に社会の要請に応えた希望の〔今月の花 シバザクラの花言葉のような〕診断システムと言えるでしょう。













芝桜(シバザクラ)
 花言葉「希望・忍耐」

 
                                                  2012年5月1日
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                             エイテック株式会社



2012年4月5日(木)

KS405−096
4月の社長メッセージ 
    安全文化の向上に資す「高調波知的劣化診断システム」
          〜モチベーション、ラーニング、アウェアネスが安全文化の評価軸〜

 近年、企業の信頼を損なう様々な事故が発生していますが、製造業においても重大産業災害が生じており、憂慮すべき事態となっています。こうした災害に対し、企業でもハード、ソフトの両面から対策を講じてはいるものの、十分な産業保安の確保につながっておらず、組織の安全文化に係わる問題との指摘もされています。そこで、現在の企業がおかれている実情や事故が発生する要因を探りつつ、安全文化の向上に向けた取り組みや、その評価軸について考えてみたいと思います。
 事故の多発については、高圧ガス保安協会がまとめた資料によりますと、ここ45年、明確に増加トレンドです。その要因の一つは、リストラが“現場の文化”を破壊した、という声です。工場で長年腕と技術を磨いたエキスパートを、簡単に経営の都合で職場から追い出してしまったことが、若い保全マンに心理的なインパクトを与えたのです。景気が悪くなるとまっ先に保全費はカットされ、ここで頑張っても自分たちも同じ運命かと、非常に悪いメッセージを与えてしまって、若い保全マンのモチベーション(動機づけ)が下がったと言わざるを得ません。モチベーションを感じられるようなインセンティブ(意欲刺激)を全体として考えていけるかが、安全文化の土台になると思います。そして、安全文化のレベルアップには、トップや現場の長の役割が大きく、さらにラーニング(学び)が大切です。
 今までの重大事故を見ましても、同じ会社が2回、3回と起こしているケースがあるのです。根本の原因を明らかにして、システムの改善に取り組むことが必要で、ラーニングは安全文化の評価軸になります。一つの事例を紹介しますと、当社のKSシリーズ初期モデルの発売直後(20038月)、ある大手化学メーカからの依頼でデモ診断を実施し、直ぐに二台の注文がありました。納品説明の折に、二台の用途を某工場長に尋ねたところ、一台は現場での診断用で、もう一台は若手の学び用に使用するとのことでした。後日、KSシリーズを手にした若手保全マンのモチベーションは向上し、保全グループ全体に明るさが戻ったとの報告を戴きました。この企業は、KSシリーズを活用しているグループ会社を含め、日本の安全優良企業に名を連ねています。
 事故多発の別の要因は、設備の老朽化と言われています。経済産業省の「産業事故調査結果」(200312月)によりますと、事故が発生した設備の経年年数の平均が、約22.2年となっている状況から、比較的に経年年数の多い設備が事故を起こす可能性が高いと言えます。しかし、この「産業事故調査結果」には、「設備年齢の高さと事故発生との相関関係はない」と報告しています。設備年齢の低い設備の突発事故、反対に設備年齢の高い設備の正常稼動といった現象は、運転中の設備状態を把握し、適切な対策を行うことにより、設備事故の発生を低くすることができるということを物語っています。つまり、設備の危険性に対するアウェアネス(気づき)能力を高めることが安全文化の評価軸につながるのです。若い保全マンには、KSシリーズの最新モデルである「高調波知的劣化診断システム」の助けを借りることでアウェアネス能力の向上が図れます。

 最近では、新幹線パンタグラフのボルト締め忘れによる架線切断事故(20101月)、ギアケース破損事故(20103月)を始め、福島第一原子力発電所の事故(20113月)など、日本の「安全神話」を揺るがす事故が続きました。それらは安全文化の問題であったような気がしてなりません。安全文化を強靭な〔今月の花 ミツマタの花言葉のような〕ものにするためには、「高調波知的劣化診断システム」が、最強の設備診断システムツールになると確信しています。













三又(ミツマタ)
 花言葉「無敵・最強」

 
                                                  2012年4月5日
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                             エイテック株式会社



2012年3月1日(木)

KS405−095
3月の社長メッセージ 
    「高調波知的劣化診断システム」は次世代の先端保全技術
          〜次世代の保全は人間の生命維持方法を持ち込んだ知的保全〜

 近年の技術革新の中で、裏方となって産業をしっかり支えている保全技術に対する認識を深める必要性が増してきました。保全技術の重要性を議論する際に取り上げられる「経済効果」については、20094月の「内閣府規制改革推進室、ヒアリング資料(材料の劣化と予知保全技術)」に記述されています。この資料によりますと、設備材料の腐食(劣化)・故障に伴う損失は、直接損失で国内総生産(GDP)の23%9兆円〜13兆円)、間接損失を含めますと45%17兆円〜22兆円)に上ります。そして、これらの損失の約4分の1程度が現有の保全技術を用いることで削減でき、新しい技術が開発されれば、この値は大幅に増加すると報告されています。これは最近の高度技術産業に比較し、けた違いに大きな経済効果を有するということになります。見方を変えれば、保全の取り組み方次第で企業にとって大幅な利潤追求ができるということになるのです。
 そこで、保全技術の思想の流れを整理し、利益の最大化を目指す次世代の保全技術について考えてみたいと思います。1950年以前の保全技術は事後保全の考え方が中心でした。事故や故障が起こってから行う保全で、この手法は人間の健康管理になぞらえれば対処療法に対応します。1950年以後になると予防保全の考え方が行われるようになりました。これは、事故や故障を事前に防止しようとする行き方で、実際に行うとなると、営繕費や対策費が膨大となり、必ずしも広く用いられることにはなりませんでした。これを健康管理にたとえれば予防医療に相当します。1958年頃、G.E.社は事後保全と予防保全を併用した生産保全を提案しました。これは生産プロセスの経済性が最も高くなるように両者を混ぜて用いるというものでした。1960年初頭になると改良保全が言われ出し、ここに至って初めて、設備あるいはプロセス設計の時点で、保全技術を取り入れることが行われたのです。即ち、保全経費が最小になるような設計が行われ出しました。1963年以後は、従来の保全方法を統合化しようとする考えが普及してきました。これが予知保全あるいは保全予防と呼ばれるもので、設備の設計、運転、廃却にわたって総合的に経済性を評価して行うとするものです。
 これらの保全方法の最大の問題点は、保全技術の殆どが過去の経験とそれに基づく予想によってプログラムされており、現在の事態に対して盲目的なことにあります。事故や故障は設備の運転状況によって起こるものなのです。従って、完全に事故や故障を未然に防止するためには、予想されるすべての事態について網羅的な対策を講じておかなければならなくなります。

 ところで視点を変え、人間の機能を考えてみます。体内あるいは体外に生命を維持するのに好ましくない現象、即ち故障や破壊に相当する現象が発生したとします。人間はこのような現象すべてに対して、常に完全な保護体制を整えてはいません。それは、膨大すぎて不可能なのです。しかし、人間は常に自己診断の機能を備えており、ひとたび好ましくない事態に遭遇すれば、直ちにそれを検知し、体内あるいは頭脳に蓄えてある情報に基づいて対応が始まります。つまり、人間は網羅的でなく、必要なことを必要なだけ選択的に行い生命を維持しています。換言すれば、高度に情報化され知的に対応していることが分かります。この点が、従来行われてきた保全方法と人間の生命維持方法との差異でしょう。

 この人間の生命維持方法を保全技術に持ち込めば、設備やプロセスを、過去の経験や予想によってのみ保全するのではなく、個々の場合について臨機応変な保全が行えることになります。即ち、必要な場合に必要なだけの保全を行い、不必要な保全に費用を投ずることがないようにするのです。従来の保全方法では、危険の可能性のために殆どの費用が費やされており、実際に起こりつつある故障や事故の防止に用いられる費用は、そのうちのごく僅かの部分にすぎないのです。必要性に応じた選択的手法は、次世代の保全であり、「高調波知的劣化診断システム」を駆使した保全こそ、待望の〔今月の花 フキノトウの花言葉のような 〕知的保全(Intelligent Maintenance)とも呼ぶべき先端保全技術なのです。危険の可能性のために投じていた大部分の経費を削減し、しかも極めて高い安全性を保ち得る知的保全で、利益の最大化を図って戴きたいと願っています。













      蕗の(フキノトウ)
   花言葉「待望・真実」

 
                                                  2012年3月1日
来月のメッセージも是非ご覧下さい 
                             エイテック株式会社



2012年2月8日(水)

KS405−094
2月の社長メッセージ 
    設備管理の効率化に貢献する「高調波知的劣化診断システム」
          〜高調波診断技法を取り入れ自主・品質保全体制を確立しよう!〜

 作業の機械化、自動化や作業環境の整備が進むにつれて、生産手段である設備管理の重要度が増大してきました。それらによって作業の容易化、省力化、労働条件の好適化などの効果があがりますが、設備投資の資金や維持経費の増加という問題が発生してきています。機械化によって作業が容易化する他に、生産量の増加、品質の向上、原価の引下げ、労働力の削減などの狙いがあり、さらに安全や環境改善の目標も持っています。
 設備管理は、単なる事後保全(故障の修理)から予防保全、生産保全(生産の経済性を高める)、TPM(全社的な生産保全)、予知保全(設備の点検・整備時期を予測)へと進み、管理の領域も導入計画や設備配置にまで拡大し、その効率化が図られようとしています。効率化の極限追求をする企業体質づくりを目標にして、“不良ゼロ・故障ゼロ・災害ゼロ”など、あらゆるロスを未然防止する仕組みをトップが主導し、現場作業者(機械オペレータなど)が自主的・自立的に7大ロス(故障ロス、段取り・調整ロス、消耗品交換ロス、立上がりロス、チョコ停・空転ロス、速度低下ロス、不良・手直しロス)を予防的、定期的に取り除く活動が不可欠です。なかでも、故障ロスと不良・手直しロスは保全方法を改善することで、小さくすることができます。すなわち、自主保全に品質保全を盛り込んだ自主・品質保全が必要と考えます。
 自主保全とは、設備の保全を現場作業者が行う保全で、設備保全の専門部署の保全マン(外注を含む)が行うより効果的に実施できるといえます。自主保全を導入するには、最初に設備を隅々まで清掃し、長年堆積した塵埃や汚れを除去します。ただし、清掃は設備の見た目を綺麗にすることではありません。“清掃は点検なり”といわれるように、清掃によって設備の潜在的な欠陥(摩耗、詰り、ゆるみ、亀裂、油切れなど)を発見し、処理することに本当の狙いがあります。このことによって現場作業者の設備に対する関心と愛着心が高められる効果も大きいのです。また同時に、設備の構造、機能などに関する理解を深め、設備を点検できる技能を身につけるようにします。この時、高調波診断技法による「高調波知的劣化診断システム」を活用することにより、設備の稼動中に潜在的な欠陥を把握することができ、劣化故障だけでなく、突発故障や間欠故障(ある期間故障状態となるが、自然に元の機能を回復し、それを繰り返す故障)も事前に発見することが可能となります。ここまで自主保全が推進されるようになれば、設備状態の把握・管理が自分たちで行える自主管理の領域に到達します。

 一方、製品の高級化・高精度化が進んできた今日、ユーザの製造メーカに対する品質保証へのニーズは、今まで以上に高度化してきており、製品品質の維持向上、均質性の確保が生産活動の重要な課題となっています。製造現場において高精度の加工を行なう時、調整を当然の作業と考え、それを上手に行なうことが熟練と思い込んでいる場合が多いものです。しかしその製造現場も、設備の自動化・無人化が進み、生産の中心が人手から設備そのものに移行しているのが現状です。このような状況において、「各工程で品質を造り込む」ためには、「設備で品質を造り込む」ことが、今まで以上に大切になってきました。つまり、品質の確保は、設備の状態によって大きく左右されるようになってきた、ということができます。 このような場合、まず不良の出ない設備の条件(高調波技術分野でいう「負荷モード」)を探り出し、その条件の変化を傾向管理し、不良の発生する潜在的な欠陥を見つけます。次にそれに対し、的確な対策を打つ設備保全、いわゆる品質保全、の考え方を自主保全に盛り込むことにより、進化した設備保全である堅固な〔今月の花() 北山杉の花言葉のような〕自主・品質保全体制が確立されるのです。













     北山杉(キタヤマスギ)
 花言葉「堅固・雄大」

 
                                                  2012年2月8日
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                             エイテック株式会社



2012年1月6日(金)

KS405−093
1月の社長メッセージ 年頭の挨拶
  2012年度 エイテック標語 3R
  〔
Reconstruction(再構築)・Responsibility(信頼性)・Revolution(革命)〕  
          〜計画保全の再構築は設備管理の信頼性向上に資する保全の革命〜

 新年あけましておめでとうございます。
 2012年がスタートしました。本年もこの「社長メッセージ」が、社会の安全・安心を支えるのに何がしかのお役に立てますよう、心を込めて努めてまいりますので、参考にして戴ければ幸甚です。
 さて、モノづくりにおける工場経営は、現場の基礎力を土台として「設備管理」と「生産管理」の柱によって成り立っています。従って、全体最適を目指す「設備管理」は、経営からの課題と生産上の課題を解決しながら、工場経営を支える太い柱であるべきです。こうした「設備管理」を達成するために、土台である現場の力を含めた「計画保全」の仕組みづくりが必須といえます。「計画保全」は、設備に関わるさまざまなサイクル(自主保全や教育・訓練、診断技術など)を有機的に結合することによって管理の統合化を図ります。また、現場の水準を正確に把握することから、現場で真に必要な資源(ヒト・モノ・カネ)が明らかになります。これに従って必要十分な資源配分がなされ、不安定な“頭でっかち”の管理体質から“筋骨体質”へ変わり、「現場力」が向上します。
 では「計画保全」において、“保全”とは何を指すものでしょうか?保全を、「壊れたら修理するもの」という狭い範囲で考えていたなら、狭い範囲にしか役立たない、すなわち部分適応となってしまいます。
 全体最適で役立つ保全とは、設備の全ライフサイクルを健全に保つというスコープで考える必要があります。日常の現場では、トラブルがどこから発生するかわかりません。従って、保全は網羅的に行わなければならず、また経営的には経済性も要求されます。これらの要求に答えるために、技術上論理的で説得力のある重点付けをもって保全を行います。しかし、それでも実際の現場では、予測しきれないさまざまなトラブル、事故、災害、品質クレーム等による損害が発生しています。従って、保全には網羅性・経済性・重点性という「技術上の論理性」が求められるばかりでなく、確率論的に発生するリスクに対処できる「経営的な保全マネジメント」の要素が要求されるのです。また、ここにコンプライアンス(法令遵守)に代表される「社会的要求の高度化」が加わるため、マネジメントの必要性がさらに増しています。この「経営的な保全マネジメント」を実現するものが「計画保全」なのです。この「計画保全」の仕組みは、経営的な「保全戦略」に基づき、実行内容を決める「保全計画」から始まり、確実な「保全実行」として保全が実施され、この結果により「保全評価」が行われ、次の「保全計画」を決めるのです。こうした管理サイクルPDCAが日常的に回る計画主導の保全の仕組みこそが「計画保全」と言えます。

 ところで、設備管理の質を上げ信頼性向上に資する保全の確立には、全体最適の仕組みづくりが必要となります。そのためには「計画保全」の体制を再構築しなければなりません。すなわち、技術力を含めた「設備管理のマネジメント力」を客観的、総合的に評価するのです。その中で、「保全実行」のステップで採用される診断ツールは、管理基準およびこれを定めた技術的根拠が、ともに書き換えられるような革命的な改善効果をもたらすものが望まれています。エイテックの「高調波知的劣化診断システム」は、設備管理の信頼性向上に資するものであり、幸福〔今月の花 ユズの花言葉〕を呼ぶ保全の革命児ではないでしょうか。













     柚子(ユズ)
 花言葉「幸福、健康美」

 
                                                  2012年1月6日
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                             エイテック株式会社



2011年12月1日(木)

KS405−092
12月の社長メッセージ 
     生産設備と社会の安全を守る「高調波知的劣化診断システム」
               〜グローバル化に適応する先進メンテナンス技術〜 

 高度成長期を中心に建設・設置された産業プラントや社会インフラの寿命による補修技術や電気設備の診断技術など、効率よく信頼される保全技術の適用が不可欠となっています。そのような中で、保全技術のグローバル化は、保全を通じ地球環境を健全に保つという観点からも重要といえます。
 これらの要請に応え、日本、中国を始め、インドや他のアジア諸国、ブラジルやアルゼンチンなどの諸国の産業が安全・安心に活用でき、貢献することを目的に「一般社団法人・国際先進メンテナンス技術センター(International Center of Advanced Maintenance (ICAM)、中国名:国際先進設備管理及維修技術中心)が201185日に設立されました。組織的には本部は日本に置かれ、日本支部、中国支部、インドやその他の国が支部となっています。今後は20124月に中国(北京)、2013年に日本で「技術交流・展示会」が開催されますが、保全技術の国際協力を通じ、環境維持や生産性向上などに大きく寄与するものと思われます。
 設備は故障する前に異常を検知し、計画的に補修されることが望まれます。そのための手段として振動診断や油分析などの監視技術があります。これらの技術は実績があり広く使われていますが、このような単機能的既存技術では限界があり、生産性向上に限らずしも直結するものではありません。メンテナンス技術は信頼性向上に資する手段であり、新技術要素の付加が欠かせません。機器の異常は環境負荷と発生ストレスにより生じるので、異常が発生する前に駆動系と負荷系の電力バランス(高調波診断技術分野では「負荷モード」)が悪くなります。従って、ある部位の一つの状態だけを見て機器状態を判断するのではなく、電力バランスを考慮しながら総合的な視点に立った状態監視技術が、インフラに対しより高い信頼性を与え得ると言えます。

 このような先進技術は、設備の複雑化・高度化に対応し、「単機能技術」から「多機能技術」、「複合機能技術」に転換させるものでなければなりません。保全技術では、これは機器の部位から駆動システムの機能喪失(故障)検出への転換を意味するものです。保全技術の転換を図ることにより、グローバル化に適応した先進メンテナンス技術が確立され、生産設備と社会の安全が守られるのです。

 高調波診断技術は「多機能技術」です。すなわち、駆動系であるモータ、インバータなどと、負荷からなるシステムの内部で発生している異常兆候とその原因、部位、程度などを検出する高度な技術で、振動診断などの「単機能技術」の弱点を補完することで、状態監視技術に革新をもたらす可能性を秘めています。この技術は、稼動中のシステムが異常(内部ストレスが大きい)か劣化かの評価が可能で、それに基づき各設備機器の寿命や信頼性の定量的な予測ができます。設備は、同一設計仕様であっても、それぞれ異なる個性を持っています。まったく同じ性能を持つ設備はありません。それは稼動条件や環境がそれぞれ違うため、設備内部に発生するストレス現象に差が生じるからです。エイテックの「高調波知的劣化診断システム」は、こういったシステム設備の状態監視には最適なツールであり、栄華〔今月の花ダリアの花言葉〕を極める21世紀型先進メンテナンスシステムになる可能性があります。  












      
     ダリア(ピンボール混合)
 花言葉「栄華、威厳」

 
                                                  2011年12月1日
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                             エイテック株式会社



2011年11月7日(月)

KS405−091
11月の社長メッセージ 
     次世代電力網の設備診断には「高調波知的劣化診断システム」
               〜電力網のインフラ整備・性能の向上に資すスマートグリッド〜 

 電力網の事故を未然に防止し、重大な損失を避けるためには適切なリスクマネージメントが重要であり、その一環として老朽化した機器の劣化診断や計画的な更新が行われます。しかし近年に至るまで機器の更新の多くは、増大を続けた需要に対応する増容量を主目的としていました。ところが、近年の低成長あるいはゼロ成長といわれる経済情勢を迎え、増容量のための交換を行う機会が少なくなったことから、設置された機器を寿命ぎりぎりまで使用する傾向が現れています。今後はすでに構築したインフラ構造の信頼性を保ちつつ、必要な機器から更新していく保全方式に切り替えることが重要となり、意志決定を支援するツールとしての診断技術が真価を問われる局面を迎えているといえます。
 電力網は発電所から送電線、配電線を経て需要家へ電力を供給するネットワークシステムです。その中で、従来の電力網は、大規模な発電所から一方的に電力を送り出す方式ですが、需要のピーク時を基準とした容量設定ではムダが多く、また電力網自体も自然災害などに弱く、復旧に手間取るケースもありました。そのため、発電の拠点を分散し需要家と供給側との双方から電力のやりとりができる「スマート=賢い」電力網が望まれています。これを実現するのがスマートグリッド(次世代電力網)です。このスマートグリッド化を進めることにより、@ピークシフト(昼間電力消費の一部を夜間電力に移行させる方法)による電力設備の有効活用と需要家の省エネ、A再生可能エネルギーの導入、Bエコカーのインフラ整備、C停電対策、などが可能になります。
 福島第一原発の事故以後、太陽光発電や風力発電をはじめとする再生可能エネルギーの導入に拍車がかかっている昨今、スマートグリッドを構築する必要性が非常に高くなっています。太陽光や風力などは、その発電量が天候や気候に左右され非常に不安定です。更に、電力需要が少ない時に供給量が増加してしまうと、配電線に大量の電力が送られ負荷をかけることになってしまいます。そのため、需要と供給のバランス、いわゆる電力バランスを調整する対策〔大型の蓄電池の設置や都市ガスを燃料にした電力と熱の同時供給(コージェネレーション)など〕が必要です。これは、高調波診断技術分野でいう「負荷モード」に相当するものといえます。つまり、スマートグリッドにつながる需要家は負荷であり、供給側の発電装置はモータに対応します。

 このスマートグリッドは、ITを活用して電力の需要状況を監視して最適なバランスに自動制御するシステムで、通信機能を備えたメータに使用電力が常時表示されることから、省エネ意識も高まります。米国では導入後に1020%も減った事例が報告されており、経済産業省は昨年から、スマートグリッドを活用した実証試験を北九州市や横浜市などで行っています。
 
一方で、スマートグリッドには電力バランスの調整による設備への過大ストレスが懸念されるため、その信頼〔今月の花アゲラタムの花言葉〕を高めるのに、エイテックの「高調波知的劣化診断システム」の活用が望まれます。 












   アゲラタム
 花言葉「信頼、幸せを得る」

 
                                                  2011年11月7日
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2011年10月4日(火)

KS405−090
10月の社長メッセージ 
     設備のストレス診断に有効な「高調波知的劣化診断システム」
               〜ストレステストが要求される原子力発電所の保全にメスを入れよう!〜 

 福島第一原子力発電所の事故以来、「反原発」「脱原発」の流れが世界規模で起きています。原発の段階的廃止を決めたドイツなどの先進国はもちろん、原発の新規導入を検討していた多くの新興国、途上国も見直しに動いています。そうした潮流の中、原子力を強力推進する方針を示しているのが中国です。現在は秦山、大亜湾、嶺澳など13基、発電能力で1082kWの原発が稼動していますが、2020年迄に70基、8000kWを建設すると発表しています。原発13基と聞くと、世界的に見ればそれなりの規模の原子力利用国ですが、中国の膨大な電力需要に比べれば原子力の比率は発電能力ベースでわずか1.1%に過ぎません。因みに現時点で、先進国では総発電電力量でフランスの75.2%を筆頭に、韓国34.8%、日本28.9%などとなっています。また、米国は104基、1606kWの原発保有超大国ですが、原子力は総発電電力量の約20%です。世界的に見ますと、2007年のデータでは世界合計435基、392.24GW39224kW)が稼動しており、原子力発電は経済社会の発展に大きく貢献して来たのです。そのような中での福島原発の事故は世界を震撼させ、現在稼動中の原子力発電所の保全の有り方を問うものになりました。
 ところで、日本の原子力発電設備に対する保全方式は長期に渡って変化はなく、海外の保全方式に比べて硬直化が次第に顕在化してきました。例えば、原子炉の運転期間は13ヶ月と法定化されていますが、この期間が13ヶ月である技術的根拠は薄弱で、西欧諸国にはこのような固定的な考えは微塵もないのです。運転期間は、適正化された保全方式の中で、科学的合理的に決められるべきものです。
 保全が、予防的なアプローチから故障予知的なアプローチを導入することで、原子力発電所の安全性が高まることは、種々の検討から明らかになっています。保全と検査を合理化し近代化していくことは社会の要請であると言っても過言ではありません。
 この原子力発電所には膨大な機器が存在し必要な機能を効果的に果たしていますが、それらの機器はさまざまな技術的個性を持っています。従って、単一的な分解点検を定期的に実施することでは、優れた点もありますが、逆に故障率を増大させるという欠点もあります。画一的にこれを適用するといった従来の保全は改善されてしかるべきものなのです。

 一方、福島原発の事故を受けて、EU(欧州連合)はストレステスト(耐性検査)を導入し、原発の安全性をコンピュータシミュレーションによって確認する再評価の仕組みを提案しました。このストレステストとは、定期検査のように機器を分解点検するものではなく、評価項目を決めてコンピュータ解析し、弱みや安全余裕が無くなる限界を調べるものです。このストレステストについては、去る6月に開かれた国際原子力機関(IAEA)の閣僚会議でも、世界のすべての原発で緊急に行う必要があるという認識で一致しています。
 エイテックの「高調波知的劣化診断システム」は、原発のストレステストのようなシミュレーションではなく、実際に機器にかかっているストレスを診断・評価し、弱点部位の特定と安全性の余裕(余寿命)を評価するもので、原発の安全性を高める元気な〔今月の花メランポジウムのような〕保全システムになり得ると言えます。
  












   メランポジウム
 花言葉「元気、小さな親切」

 
                                                  2011年10月4日
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